区分求積法・和の極限と積分による評価

小区間の幅を読み取って和を定積分へ変換し、不等式とはさみうちで値や誤差を評価する。

この単元の目標
  • 区分求積法の幅・代表点・積分範囲を説明し、和の極限を定積分に直せる
  • 式を n の適切なべきで割って、和に隠れた関数と小区間の幅を見つけられる
  • 関数の大小関係や単調性を積分不等式に移し、極限や誤差を評価できる
📑 目次
  1. 定積分を「細長い長方形の和」と見る
  2. 和を積分に直すための3点セット
  3. 原始関数がわからなくても評価できる

定積分を「細長い長方形の和」と見る

定積分は原始関数の差として計算できますが、その背景には幅を限りなく小さくした和があります。連続関数 ff を区間 [a,b][a,b](a<ba<b)で考え、区間を n 等分します。右端を代表点に選んでも左端を選んでも、細分化した極限は同じです。関数が負の部分は符号付きの面積として加えます。

Δx=b−an,xk=a+(b−a)kn,lim⁡n→∞∑k=1nf(xk)Δx=∫abf(x) dx\Delta x=\frac{b-a}{n},\quad x_k=a+\frac{(b-a)k}{n},\quad \lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^n f(x_k)\Delta x=\int_a^b f(x)\,dx
ab細い長方形の面積を足し合わせる分割を細かくすると ∫ᵃᵇ f(x)dx になる
長方形の「高さ×幅」の和を、幅を0へ近づけて定積分にする。

🔍 単調増加関数では上下の長方形ではさめる

  1. 1:各小区間で高さを比べる
    f(xk−1)≤f(x)≤f(xk)(xk−1≤x≤xk)f(x_{k-1})\le f(x)\le f(x_k)\qquad(x_{k-1}\le x\le x_k)

    ここでは f が連続かつ単調増加とします。各区間の左端が最小、右端が最大です。

  2. 2:幅を掛けて全区間を足す
    Ln=Δx∑k=1nf(xk−1)≤∫abf(x) dx≤Δx∑k=1nf(xk)=RnL_n=\Delta x\sum_{k=1}^n f(x_{k-1})\le\int_a^b f(x)\,dx\le\Delta x\sum_{k=1}^n f(x_k)=R_n

    長方形の面積の和が定積分の下側・上側の評価になります。

  3. 3:上下の差を計算する
    Rn−Ln=Δx{f(b)−f(a)}=b−an{f(b)−f(a)}⟶0R_n-L_n=\Delta x\{f(b)-f(a)\}=\frac{b-a}{n}\{f(b)-f(a)\}\longrightarrow0

    和の途中の項が打ち消し合います。定積分との差もこの幅以下なので、左右いずれの和も定積分に近づきます。

和を積分に直すための3点セット

  1. まず 1/n1/n や (b−a)/n(b-a)/n をくくり出し、長方形の幅を見つける。
  2. 残りを f(k/n)f(k/n) や f(a+(b−a)k/n)f(a+(b-a)k/n) と見て、関数と代表点を決める。
  3. 代表点が走る区間と連続性を確認し、その区間の定積分を計算する。

1n∑k=1nf(k/n)\frac1n\sum_{k=1}^n f(k/n) なら積分範囲は [0,1][0,1]。一方、2n∑k=1nf(1+2k/n)\frac2n\sum_{k=1}^n f(1+2k/n) なら幅は 2/n2/n、範囲は [1,3][1,3] です。最初の代表点が a+Δxa+\Delta x でも、最初の長方形自体は aa から始まるため、積分の下端は aa になります。

例題1:分母に n と k が混ざる和

lim⁡n→∞∑k=1n1n+k\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^n\frac1{n+k} を求めよ。

解答・解説

1n+k=1n11+k/n\frac1{n+k}=\frac1n\frac1{1+k/n} と変形します。幅は 1/n1/n、関数は f(x)=1/(1+x)f(x)=1/(1+x)、範囲は [0,1][0,1]。この区間で連続なので、極限は ∫0111+x dx=[log⁡(1+x)]01=log⁡2\int_0^1\frac1{1+x}\,dx=[\log(1+x)]_0^1=\log2。自然対数で約 0.69310.6931。同じ和は [1,2][1,2] 上の 1/x1/x の右端和とも解釈できます。

原始関数がわからなくても評価できる

連続関数 f,gf,g について、区間全体で f(x)≤g(x)f(x)\le g(x) なら、その差 g−fg-f は非負なので定積分でも大小関係が保たれます。ただし積分の向きは a<ba<b とします。定数で上下からはさむだけでも、値があり得る範囲を確定できます。

f(x)≤g(x) ⇒ ∫abf(x) dx≤∫abg(x) dx,m≤f(x)≤M ⇒ m(b−a)≤∫abf(x) dx≤M(b−a)f(x)\le g(x)\ \Rightarrow\ \int_a^b f(x)\,dx\le\int_a^b g(x)\,dx,\qquad m\le f(x)\le M\ \Rightarrow\ m(b-a)\le\int_a^b f(x)\,dx\le M(b-a)
例題2:積分不等式で評価して極限を求める

nn を正の整数とし、In=∫01xn1+x dxI_n=\int_0^1\frac{x^n}{1+x}\,dx とする。InI_n を上下から評価し、lim⁡n→∞In\lim_{n\to\infty}I_n を求めよ。

解答・解説

0≤x≤10\le x\le1 で 1≤1+x≤21\le1+x\le2 だから 12≤11+x≤1\frac12\le\frac1{1+x}\le1。非負の xnx^n を掛けると xn2≤xn1+x≤xn\frac{x^n}{2}\le\frac{x^n}{1+x}\le x^n。積分して 12(n+1)≤In≤1n+1\frac1{2(n+1)}\le I_n\le\frac1{n+1}。両端が0に近づくので、はさみうちにより極限は0です。たとえば n=1n=1 では I1=1−log⁡2≈0.3069I_1=1-\log2\approx0.3069 で、1/4≤I1≤1/21/4\le I_1\le1/2 を満たします。

単調性は近似誤差も教えてくれます。例題1の f(x)=1/(1+x)f(x)=1/(1+x) は減少関数なので、右端和 SnS_n は積分より小さく、左端和との差は (f(0)−f(1))/n=1/(2n)(f(0)-f(1))/n=1/(2n)。したがって 0≤log⁡2−Sn≤1/(2n)0\le\log2-S_n\le1/(2n) です。極限値だけでなく「どれくらい近いか」も積分によって保証できます。

「各項が0へ近づくから和も0」は誤りです。項数も増えており、例題1の極限は log⁡2\log2 でした。また、区分求積に必要な幅 1/n1/n を落とさないこと。連続性を確認せず、端で発散する 1/x1/x などを [0,1][0,1] の通常の定積分として扱うこともできません。不等式に負の数を掛けると向きが逆転します。
練習:幅・関数・範囲と評価
  1. lim⁡n→∞1n∑k=1nkn\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac1n\sum_{k=1}^n\sqrt{\frac{k}{n}} を求めよ。

    ヒント

    幅は 1/n1/n、f(x)=xf(x)=\sqrt{x}、範囲は [0,1][0,1]。端点でも連続です。

    解答・解説

    ∫01x dx=[23x3/2]01=23\int_0^1\sqrt{x}\,dx=[\frac23x^{3/2}]_0^1=\frac23。増加関数の右端和なので有限の n では 2/32/3 以上であり、そこから極限に近づきます。

  2. lim⁡n→∞2n∑k=1n(1+2kn)2\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac2n\sum_{k=1}^n\left(1+\frac{2k}{n}\right)^2 を求めよ。

    ヒント

    幅は 2/n2/n、代表点は 1+2k/n1+2k/n。積分範囲は [0,1][0,1] ではありません。

    解答・解説

    [1,3][1,3] 上の f(x)=x2f(x)=x^2 の右端和なので ∫13x2 dx=[x3/3]13=26/3\int_1^3x^2\,dx=[x^3/3]_1^3=26/3。別法では 2∫01(1+2t)2 dt2\int_0^1(1+2t)^2\,dt と書いても同じ値になります。

  3. J=∫01ex2 dxJ=\int_0^1 e^{x^2}\,dx に対して 1≤J≤e−11\le J\le e-1 を示せ。

    ヒント

    0≤x≤10\le x\le1 で 0≤x2≤x0\le x^2\le x。指数関数は増加関数です。

    解答・解説

    1≤ex2≤ex1\le e^{x^2}\le e^x を 00 から 11 まで積分すると 1≤J≤[ex]01=e−11\le J\le[e^x]_0^1=e-1。数値では J≈1.4627J\approx1.4627、上限は約 1.71831.7183。原始関数を求めなくても、比較しやすい関数から値の範囲がわかります。

確認クイズ

問1. ∑k=1nnn2+k2\sum_{k=1}^n\frac{n}{n^2+k^2} の極限を表す定積分はどれか。

問2. [0,1][0,1] 上で連続な減少関数の右端和 Rn=1n∑k=1nf(k/n)R_n=\frac1n\sum_{k=1}^nf(k/n) は、定積分とどの関係にあるか。

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