部分積分と部分分数――積と分数を積分しやすくする

積の微分から部分積分を導き、役割の選択・反復・有理関数の分解を使い分ける。

この単元の目標
  • 積の微分公式から部分積分を導き、微分する側と積分する側を選べる
  • 部分積分を反復して多項式と指数関数などの積を積分できる
  • 部分分数分解で有理関数を積分し、定義域・積分定数・微分による検算を確認できる
📑 目次
  1. 積分法を選ぶ目印
  2. 反復すると元の積分が現れる場合
  3. 部分分数分解:分母を分けて基本積分へ

積分法を選ぶ目印

積の形を見ても、すぐに部分積分とは限りません。2xex22xe^{x^2} のように「内側の微分」がそろうなら置換が直接的です。一方 xexxe^x は、xx を微分すると簡単になり、exe^x はすぐ積分できます。このように片方を微分し、片方を積分して、残る積分を簡単にするのが部分積分です。以下、各関数が必要な微分をもつ区間で考えます。

🔍 積の微分を移項して積分する

  1. 出発点は積の微分
    ddx(uv)=u′v+uv′\frac{d}{dx}(uv)=u\prime v+uv\prime

    u=u(x)u=u(x) と v=v(x)v=v(x) がともに微分可能で、導関数が連続とします。

  2. 積分したい項を取り出す
    ∫uv′ dx=uv−∫u′v dx\int uv\prime\,dx=uv-\int u\prime v\,dx

    右辺の積分を計算した最後に積分定数を一つまとめます。uu が微分する側、v′v\prime が積分する側です。

  3. 微分形式と定積分の形
    ∫u dv=uv−∫v du,∫abuv′ dx=[uv]ab−∫abu′v dx\int u\,dv=uv-\int v\,du,\qquad\int_a^b uv\prime\,dx=[uv]_a^b-\int_a^b u\prime v\,dx

    定積分では境界項 [uv]ab=u(b)v(b)−u(a)v(a)[uv]_a^b=u(b)v(b)-u(a)v(a) が必須です。被積分関数が区間内で連続かも確認します。

積分したい形微分する側 u積分する側 dv選ぶ理由
xexxe^xxxexdxe^x dxxx が 1 になり残りが基本積分になる
x2sin⁡xx^2\sin xx2x^2sin⁡x dx\sin x\,dx反復すると多項式の次数が下がる
log⁡x\log xlog⁡x\log xdxdx1⋅log⁡x1\cdot\log x と見れば導関数が 1/x1/x になる

積分する側の原始関数 vv は一つ選べば十分で、途中の vv に毎回任意定数を付ける必要はありません。不定積分の最終結果に +C+C を付けます。選択の良し悪しは「残った積分が簡単になったか」で判断し、複雑になるときは役割や方法を見直します。

例題1:部分積分を2回繰り返す

∫x2ex dx\displaystyle\int x^2e^x\,dx を求め、微分して確かめよ。

解答・解説

まず u=x2, dv=exdxu=x^2,\ dv=e^x dx と置くと x2ex−2∫xexdxx^2e^x-2\int xe^x dx。残りにも u=x, dv=exdxu=x,\ dv=e^x dx を使うと ∫xexdx=xex−ex\int xe^x dx=xe^x-e^x(ここでは原始関数を一つ選択)。よって答えは ex(x2−2x+2)+Ce^x(x^2-2x+2)+C です。微分すると ex(x2−2x+2)+ex(2x−2)=x2exe^x(x^2-2x+2)+e^x(2x-2)=x^2e^x。多項式の次数が 2→1→0 と下がり、すべての実数で成立します。

反復すると元の積分が現れる場合

反復は次数を下げるためだけではありません。I=∫excos⁡x dxI=\int e^x\cos x\,dx と記号を置くと、2 回の部分積分で I=excos⁡x+exsin⁡x−II=e^x\cos x+e^x\sin x-I という関係を得ます(原始関数の定数差を除いた表記)。同じ積分を左辺に集め、I=12ex(sin⁡x+cos⁡x)+CI=\frac12e^x(\sin x+\cos x)+C。実際に微分すると正弦の項が消え、excos⁡xe^x\cos x に戻ります。「元に戻った」ことを失敗と考えず、方程式として解くのが要点です。

部分分数分解:分母を分けて基本積分へ

部分分数分解は部分積分とは別の方法で、有理関数を積分しやすい分数の和に直す代数操作です。まず分母を因数分解します。分子の次数が分母以上なら先に割り算を行います。異なる一次因子なら各因子を分母とする分数を置き、通分して分子の係数を比較します。分解後も、元の分母が 0 になる点を定義域から除外します。

1(x−a)(x−b)=1a−b(1x−a−1x−b)(a≠b)\frac{1}{(x-a)(x-b)}=\frac{1}{a-b}\left(\frac{1}{x-a}-\frac{1}{x-b}\right)\quad(a\ne b)

重複する因子 (x−a)2(x-a)^2 がある場合は A/(x−a)+B/(x−a)2A/(x-a)+B/(x-a)^2 のように各次数を用意します。一次因子の逆数は対数に、その二乗以上の逆数はべきの積分になります。「有理関数を積分すると必ず対数だけになる」わけではありません。

例題2:通分で係数を決め、対数を積分する

∫1x2−1 dx\displaystyle\int\frac{1}{x^2-1}\,dx を求めよ。

解答・解説

1/{(x−1)(x+1)}=A/(x−1)+B/(x+1)1/\{(x-1)(x+1)\}=A/(x-1)+B/(x+1) と置きます。通分すると 1=A(x+1)+B(x−1)1=A(x+1)+B(x-1)。A+B=0, A−B=1A+B=0,\ A-B=1 より A=1/2, B=−1/2A=1/2,\ B=-1/2。したがって 12log⁡∣x−1∣−12log⁡∣x+1∣+C\frac12\log|x-1|-\frac12\log|x+1|+C。微分は 12(x−1)−12(x+1)=1/(x2−1)\frac{1}{2(x-1)}-\frac{1}{2(x+1)}=1/(x^2-1)。x=±1x=\pm1 をまたがない各区間で有効で、積分定数は区間ごとに独立です。

部分積分の右辺は引き算です。 uvuv だけで終えたり、残りの積分の符号を落としたりしないようにします。また ∫fg dx\int fg\,dx は一般に (∫f dx)(∫g dx)(\int f\,dx)(\int g\,dx) ではありません。部分分数分解では積分する前に通分して元の分数に戻るか確認し、積分後は微分で二重に検算しましょう。
練習:方法の選択から検算まで
  1. x>0x>0 で ∫log⁡x dx\displaystyle\int\log x\,dx を求めよ。

    ヒント

    log⁡x⋅1\log x\cdot1 と見て u=log⁡x, dv=dxu=\log x,\ dv=dx と置きます。

    解答・解説

    xlog⁡x−∫x⋅(1/x) dx=xlog⁡x−x+Cx\log x-\int x\cdot(1/x)\,dx=x\log x-x+C。微分は log⁡x+1−1=log⁡x\log x+1-1=\log x。元の関数 log⁡x\log x の定義域は x>0x>0 であり、計算の途中で勝手に負の領域へ広げません。

  2. ∫0πxsin⁡x dx\displaystyle\int_0^\pi x\sin x\,dx を求めよ。

    ヒント

    u=x, dv=sin⁡x dxu=x,\ dv=\sin x\,dx。v=−cos⁡xv=-\cos x の符号と境界項に注意します。

    解答・解説

    [−xcos⁡x]0π+∫0πcos⁡x dx=π+[sin⁡x]0π=π[-x\cos x]_0^\pi+\int_0^\pi\cos x\,dx=\pi+[\sin x]_0^\pi=\pi。原始関数 −xcos⁡x+sin⁡x-x\cos x+\sin x の微分は xsin⁡xx\sin x。区間内で被積分関数は連続で、定積分の結果には +C+C を付けません。

  3. ∫2x+3x(x+1) dx\displaystyle\int\frac{2x+3}{x(x+1)}\,dx を求めよ。

    ヒント

    A/x+B/(x+1)A/x+B/(x+1) と置き、2x+3=A(x+1)+Bx2x+3=A(x+1)+Bx の係数を比較します。

    解答・解説

    A=3, B=−1A=3,\ B=-1 より 3log⁡∣x∣−log⁡∣x+1∣+C3\log|x|-\log|x+1|+C。微分は 3/x−1/(x+1)=(2x+3)/{x(x+1)}3/x-1/(x+1)=(2x+3)/\{x(x+1)\}。x=−1,0x=-1,0 は除外し、これらで区切られる三つの区間それぞれで積分定数を選べます。

確認クイズ

問1. ∫xcos⁡x dx\int x\cos x\,dx を簡単にする部分積分の選択は?

問2. 1/{x(x+2)}1/\{x(x+2)\} の正しい部分分数分解は?

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