基本積分と置換積分――合成関数の微分を逆にたどる

原始関数の定義から基本公式を整理し、置換に伴う微分と端点の変更、対数の絶対値を確実に扱う。

この単元の目標
  • 基本的な関数の不定積分を、定義域と積分定数を明記して求められる
  • 合成関数の微分を逆に使い、置換積分で変数・微分・端点をそろえられる
  • 対数の絶対値の必要性を説明し、原始関数を微分して検算できる
📑 目次
  1. 積分は「微分すると何になるか」から考える
  2. なぜ log の中に絶対値が付くのか
  3. 置換積分は連鎖律の逆向き

積分は「微分すると何になるか」から考える

ある区間で F′(x)=f(x)F'(x)=f(x) が成り立つとき、FF を ff の原始関数といいます。不定積分は原始関数の集まりで、∫f(x) dx=F(x)+C\int f(x)\,dx=F(x)+C と書きます。定数の微分は 0 なので CC は微分からは決まりません。定積分は、連続な被積分関数について原始関数の差 F(b)−F(a)F(b)-F(a) で求める数であり、最後に +C+C は付けません。

被積分関数原始関数の一つ条件・確認点
xrx^rxr+1/(r+1)x^{r+1}/(r+1)r≠−1r\ne-1。実数の指数を一律に扱うなら x>0x>0 とする
1/x1/xlog⁡∣x∣\log|x|x≠0x\ne0。0 をまたがない区間で使う
exe^xexe^xすべての実数で微分して同じ関数になる
axa^xax/log⁡aa^x/\log aa>0, a≠1a>0,\ a\ne1
cos⁡x\cos xsin⁡x\sin x角度はラジアン
sin⁡x\sin x−cos⁡x-\cos xマイナスの符号を微分で確認する

この教材の log⁡\log は自然対数です。表には原始関数を一つだけ載せています。不定積分の答えには +C+C を補います。また、和や定数倍は項ごとに積分できますが、積を「積分したものどうしの積」にする公式はありません。まず展開・約分・置換などで基本公式が使える形を探します。

なぜ log の中に絶対値が付くのか

x>0x>0 では (log⁡x)′=1/x(\log x)'=1/x です。一方 x<0x<0 では −x>0-x>0 なので、(log⁡(−x))′=(−1)/(−x)=1/x(\log(-x))'=(-1)/(-x)=1/x。二つをまとめた表記が log⁡∣x∣\log|x| です。1/x1/x の定義域は 0 で分かれるため、負の区間と正の区間では積分定数を独立に選べます。絶対値を付けても x=0x=0 で定義されるわけではありません。

置換積分は連鎖律の逆向き

🔍 内側の微分がそろえば、一つの変数にまとめられる

  1. 外側の原始関数を用意する
    F′(u)=f(u),ddxF(g(x))=f(g(x))g′(x)F\prime(u)=f(u),\qquad \frac{d}{dx}F(g(x))=f(g(x))g\prime(x)

    ff は連続、gg は連続な導関数をもち、合成が定義される区間で考えます。連鎖律により内側の微分が掛かります。

  2. 微分の等式を積分として読む
    ∫f(g(x))g′(x) dx=F(g(x))+C\int f(g(x))g\prime(x)\,dx=F(g(x))+C

    u=g(x)u=g(x)、du=g′(x) dxdu=g\prime(x)\,dx と書けば、左辺は ∫f(u) du\int f(u)\,du。記号の置き換えは連鎖律に裏付けられています。

  3. 定積分では端点も合成関数に通す
    ∫abf(g(x))g′(x) dx=∫g(a)g(b)f(u) du\int_a^b f(g(x))g\prime(x)\,dx=\int_{g(a)}^{g(b)}f(u)\,du

    両辺はともに F(g(b))−F(g(a))F(g(b))-F(g(a))。新しい上端が下端より小さくなる場合も、向きをそのまま残せば成立します。

  1. 括弧・根号・指数・分母の「内側」を uu と置き、その導関数を計算する。
  2. dxdx も含めて変換し、足りない定数倍を調整する。積分記号内に xx と uu を混在させない。
  3. 不定積分なら最後に xx に戻して +C+C。定積分なら新しい端点で計算するか、xx に戻して元の端点を使う。
  4. 得た原始関数を微分する。係数・符号・定義域が元の関数と一致するか確認する。
例題1:分母の微分が分子にある形

∫2xx2−1 dx\displaystyle\int\frac{2x}{x^2-1}\,dx を求め、微分で検算せよ。

解答・解説

u=x2−1u=x^2-1 と置くと du=2x dxdu=2x\,dx なので、∫du/u=log⁡∣u∣+C=log⁡∣x2−1∣+C\int du/u=\log|u|+C=\log|x^2-1|+C。検算は {log⁡∣x2−1∣}′=2x/(x2−1)\{\log|x^2-1|\}'=2x/(x^2-1) です。x=±1x=\pm1 は除外し、(−∞,−1),(−1,1),(1,∞)(-\infty,-1),(-1,1),(1,\infty) の各区間で公式を使います。各区間の CC は別々に選べます。

例題2:減少する置換と定積分の端点

∫012−x dx\displaystyle\int_0^1\sqrt{2-x}\,dx を置換積分で求めよ。

解答・解説

u=2−xu=2-x とすると du=−dxdu=-dx。x=0,1x=0,1 に対応する端点は u=2,1u=2,1 です。したがって −∫21u1/2 du=∫12u1/2 du=[23u3/2]12=23(22−1)-\int_2^1u^{1/2}\,du=\int_1^2u^{1/2}\,du=[\frac23u^{3/2}]_1^2=\frac23(2\sqrt2-1)。元の変数での原始関数 −23(2−x)3/2-\frac23(2-x)^{3/2} を微分すると 2−x\sqrt{2-x} に戻ります。区間内では根号の中は正です。

端点は変数の値です。 uu に直した積分に xx の端点を流用しないでください。また、∫−11(1/x) dx\int_{-1}^{1}(1/x)\,dx を log⁡∣1∣−log⁡∣−1∣=0\log|1|-\log|-1|=0 としてはいけません。途中の 0 で関数が定義されず、ここまでの定積分の公式は適用できません。左右を別々の極限で定義する広義積分も収束しません。
練習:置換・端点・定義域を一組で確認
  1. ∫e3x−2 dx\displaystyle\int e^{3x-2}\,dx を求め、検算せよ。

    ヒント

    u=3x−2u=3x-2 と置くと du=3dxdu=3dx。あるいは e3x−2e^{3x-2} を微分したときの係数を考えます。

    解答・解説

    13e3x−2+C\frac13e^{3x-2}+C。微分は 13⋅3e3x−2=e3x−2\frac13\cdot3e^{3x-2}=e^{3x-2}。すべての実数で有効です。

  2. ∫012x1+x2 dx\displaystyle\int_0^1\frac{2x}{1+x^2}\,dx を求めよ。

    ヒント

    u=1+x2u=1+x^2 とし、下端と上端をそれぞれ計算します。

    解答・解説

    du=2x dxdu=2x\,dx、端点は 1 と 2。∫12du/u=[log⁡u]12=log⁡2\int_1^2du/u=[\log u]_1^2=\log2。1+x2>01+x^2>0 なので、原始関数は log⁡(1+x2)\log(1+x^2) と絶対値なしで書けます。その微分も元の被積分関数に一致します。

  3. ∫12x−3 dx\displaystyle\int\frac{1}{2x-3}\,dx を求め、使える区間を述べよ。

    ヒント

    u=2x−3u=2x-3 と置きます。uu は負になることもあります。

    解答・解説

    12log⁡∣2x−3∣+C\frac12\log|2x-3|+C。x<3/2x<3/2 または x>3/2x>3/2 の区間で有効で、定数は区間ごとに独立です。微分すると 12⋅22x−3=1/(2x−3)\frac12\cdot\frac{2}{2x-3}=1/(2x-3)。log⁡(2x−3)\log(2x-3) だけでは負側の区間を表せません。

確認クイズ

問1. ∫012xex2 dx\int_0^1 2x e^{x^2}\,dx で u=x2u=x^2 と置いたとき、正しい変形は?

問2. x<0x<0 の区間で 1/x1/x の原始関数になるものは?

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