複素数と図形

差の絶対値で距離、商の偏角で角度を表し、円・垂直・共線などの図形条件を複素数の方程式として書き直す。

この単元の目標
  • 複素数の絶対値で距離や軌跡を表すことができる
  • 商 z1−z2z3−z2\dfrac{z_1 - z_2}{z_3 - z_2} の偏角がなす角を表すことを利用して、垂直条件や共線条件を書ける
  • 複素数の方程式を図形の条件として読み替えることができる
📑 目次
  1. 差の絶対値は距離——軌跡の基本
  2. 商の偏角が「角度」を語る
  3. 垂直・共線を商で判定する

差の絶対値は距離——軌跡の基本

複素数平面上で「点 zz と点 ww の間の距離」は ∣z−w∣|z - w| です。この一事実だけで、円・線分・垂直二等分線の条件が複素数の方程式に翻訳できます。条件式を立てたら「どの2点間の距離を等しい・一定と言っているのか」に立ち返って読み直すのが、複素数の図形問題の基本戦略です。

図形の条件複素数の方程式読み方
中心 z0z_0、半径 rr の円∣z−z0∣=r|z - z_0| = r点 zz と z0z_0 の距離が一定
線分 AB\mathrm{AB}(α,β\alpha, \beta に対応)∣z−α∣+∣z−β∣=∣α−β∣|z - \alpha| + |z - \beta| = |\alpha - \beta|2点 α,β\alpha, \beta への距離の和が最小値に一致 → 線分上
線分 AB\mathrm{AB} の垂直二等分線∣z−α∣=∣z−β∣|z - \alpha| = |z - \beta|2点までの距離が等しい
例題1:方程式を図形に読み替える

複素数平面上で、∣z−2∣=∣z−2i∣|z - 2| = |z - 2i| を満たす点 zz の軌跡を求めよ。

解答・解説

点 22(座標 (2,0)(2, 0))と点 2i2i(座標 (0,2)(0, 2))までの距離が等しい点の集合、すなわち **線分 AB の垂直二等分線**です。中点は 1+i1+i、元の線分の傾きは −1-1 なので、それに垂直な傾き 11 の直線 y=xy=x が答えになります。座標で確かめると (x−2)2+y2=x2+(y−2)2(x-2)^2+y^2=x^2+(y-2)^2 より x=yx=y です。

商の偏角が「角度」を語る

複素数平面で図形を扱う際の最強の武器は、商の偏角です。相異なる3点 A(α),B(β),C(γ)\mathrm{A}(\alpha), \mathrm{B}(\beta), \mathrm{C}(\gamma) に対して商 γ−βα−β\dfrac{\gamma - \beta}{\alpha - \beta} を考えると、分子 γ−β\gamma - \beta はベクトル BC→\overrightarrow{\mathrm{BC}}、分母 α−β\alpha - \beta は BA→\overrightarrow{\mathrm{BA}} に対応します。商の偏角は「分母の向きから分子の向きへ回す角」なので、これは BA から BC への有向角です。通常の内角は 00 から π\pi の範囲なので、商の偏角の主値の絶対値をとります。さらに商の絶対値は2つのベクトルの長さの比 BCBA\dfrac{\mathrm{BC}}{\mathrm{BA}} です。

arg⁡γ−βα−β=arg⁡(γ−β)−arg⁡(α−β)    (∠ABC の回転角),∣γ−βα−β∣=BCBA\arg\frac{\gamma - \beta}{\alpha - \beta} = \arg(\gamma - \beta) - \arg(\alpha - \beta) \;\; \text{(} \angle\mathrm{ABC} \text{ の回転角)}, \qquad \left|\frac{\gamma - \beta}{\alpha - \beta}\right| = \frac{\mathrm{BC}}{\mathrm{BA}}

🔍 なぜ商の偏角で角度がわかるのか

  1. 点の差をベクトルに対応させる
    γ−β  ↔  BC→,α−β  ↔  BA→\gamma - \beta \;\leftrightarrow\; \overrightarrow{\mathrm{BC}}, \qquad \alpha - \beta \;\leftrightarrow\; \overrightarrow{\mathrm{BA}}

    複素数の差は「終点 − 始点」のベクトル。同じ始点に揃えた2本のベクトルを用意します。

  2. 商の絶対値と偏角の法則を適用する
    γ−βα−β=∣BC→∣∣BA→∣ ei(arg⁡BC→−arg⁡BA→)\frac{\gamma - \beta}{\alpha - \beta} = \frac{|\overrightarrow{\mathrm{BC}}|}{|\overrightarrow{\mathrm{BA}}|}\, e^{i(\arg\overrightarrow{\mathrm{BC}} - \arg\overrightarrow{\mathrm{BA}})}

    絶対値は長さの比、偏角は2本の向きの開き(回転角)に分解されます。

  3. 回転角が 0 / ±π/2 のときを条件式にする
    共線  ⟺  arg⁡γ−βα−β=0,π  ⟺  γ−βα−β∈R\text{共線} \iff \arg\frac{\gamma - \beta}{\alpha - \beta} = 0, \pi \iff \frac{\gamma - \beta}{\alpha - \beta} \in \mathbb{R}

    回転角が 0 か π\pi(=180度)なら3点は1本の直線上に乗ります。虚部が 0 の実数になった、という判定だけで共線がわかります。

垂直・共線を商で判定する

  • 3点 A(α),B(β),C(γ)\mathrm{A}(\alpha), \mathrm{B}(\beta), \mathrm{C}(\gamma) が同一直線上   ⟺  γ−βα−β\iff \dfrac{\gamma - \beta}{\alpha - \beta} が実数(かつ異なる3点)
  • ∠ABC=90° (BA→⊥BC→)   ⟺  γ−βα−β\angle\mathrm{ABC} = 90°\ (\overrightarrow{\mathrm{BA}} \perp \overrightarrow{\mathrm{BC}})\ \iff \dfrac{\gamma - \beta}{\alpha - \beta} が純虚数
  • 三角形の相似・回転:γ−βα−β=peiθ\dfrac{\gamma - \beta}{\alpha - \beta} = p e^{i\theta} なら、辺 BA\mathrm{BA} を pp 倍に伸ばして角 θ\theta 回転させたものが辺 BC\mathrm{BC}
  • 正三角形の条件:γ−β=e±iπ/3(α−β)\gamma - \beta = e^{\pm i\pi/3}(\alpha - \beta)(辺の長さを等しく、角を ±60°\pm 60°)
例題2:垂直条件を商で確認する

A(1+2i), B(3+4i), C(5+2i)\mathrm{A}(1 + 2i),\ \mathrm{B}(3 + 4i),\ \mathrm{C}(5 + 2i) について、∠ABC=90°\angle\mathrm{ABC} = 90° となる理由を商 α−βγ−β\dfrac{\alpha - \beta}{\gamma - \beta} で説明せよ。

解答・解説

α−β=−2−2i\alpha - \beta = -2 - 2i、γ−β=2−2i\gamma - \beta = 2 - 2i なので α−βγ−β=(−2−2i)(2+2i)(2−2i)(2+2i)=−8i8=−i\dfrac{\alpha - \beta}{\gamma - \beta} = \dfrac{(-2 - 2i)(2 + 2i)}{(2 - 2i)(2 + 2i)} = \dfrac{-8i}{8} = -i。これは**純虚数**(偏角 −π/2-\pi/2)なので、2つのベクトルのなす角は 90°90° です。

共線・垂直の判定は「商の実部・虚部」だけで済みます。共線なら虚部 0、垂直なら実部 0。数値が与えられた問題では、まず商を計算してどちらが 0 になるかを見ると一瞬で判別できます。
除外点は元の条件から判断する:商の分母が 0 になる点では商は未定義で、分子が 0 なら偏角は未定義です。角度を扱う際は2本のベクトルがともに零でないことを確認します。一方、距離の式だけなら無条件に点を除く必要はありません。分母を払って得た円に、もとの式では使えない点が混入していないか最後に戻って確認しましょう。
練習問題
  1. 点 zz が ∣z−i∣=2|z - i| = 2 を満たすときの軌跡を述べよ。また ∣z−i∣≤2|z - i| \le 2 の場合はどうなるか。

    ヒント

    「点 ii との距離」に翻訳する。

    解答・解説

    点 ii(座標 (0,1)(0, 1))を中心とする半径 2 の**円周**。不等号を含む ∣z−i∣≤2|z - i| \le 2 なら円の**内部(境界を含む円板)**になります。

  2. 3点 A(i), B(1+3i), C(2+5i)\mathrm{A}(i),\ \mathrm{B}(1 + 3i),\ \mathrm{C}(2 + 5i) が同一直線上にあることを、商を用いて示せ。

    ヒント

    γ−αβ−α\dfrac{\gamma - \alpha}{\beta - \alpha} が実数になることを確かめる。

    解答・解説

    β−α=1+2i\beta - \alpha = 1 + 2i、γ−α=2+4i\gamma - \alpha = 2 + 4i なので γ−αβ−α=2\dfrac{\gamma - \alpha}{\beta - \alpha} = 2(実数)。偏角が 0 に一致するので A, B, C は同一直線上にあります(しかも AC=2 AB\mathrm{AC} = 2\,\mathrm{AB} で B が中点)。

  3. ∣z∣=1|z| = 1 の円周上の点 z (≠±1)z \ (\ne \pm 1) について、w=z+1z−1w = \dfrac{z + 1}{z - 1} の実部が 0 になることを示せ。ただし z=1z = 1 は除外点であることに注意せよ。

    ヒント

    z=x+iyz=x+iy として分母の共役を掛け、x2+y2=1x^2+y^2=1 を使う。

    解答・解説

    w=(x+1+iy)(x−1−iy)(x−1)2+y2=x2+y2−1−2iy(x−1)2+y2w=\dfrac{(x+1+iy)(x-1-iy)}{(x-1)^2+y^2}=\dfrac{x^2+y^2-1-2iy}{(x-1)^2+y^2}。x2+y2=1x^2+y^2=1 より実部は 0。逆に分母が 0 でなければ、実部 0 は x2+y2=1x^2+y^2=1 と同値です。実部 0 だけの条件なら円周から z=1z=1 のみを除き、z=−1z=-1(w=0w=0)は含みます。一方、非零の純虚数という条件や直角の条件では z=−1z=-1 も除きます。この問題は初めから z≠±1z\ne\pm1 なので ww は非零の純虚数です。

確認クイズ(複素数と図形)

問1. 3点 A(α),B(β),C(γ)\mathrm{A}(\alpha), \mathrm{B}(\beta), \mathrm{C}(\gamma) が同一直線上にあることを示す条件はどれか(α,β,γ\alpha, \beta, \gamma は相異なる)。

問2. 方程式 ∣z−3+2i∣=1|z - 3 + 2i| = 1 の表す図形は?

📝 メモこの端末のみに保存
メモ欄はページ読み込み後に使えるようになります。