複素数の計算と二次方程式の解

虚数単位 i の計算規則、共役な複素数を使った割り算、虚数解をもつ二次方程式と解と係数の関係を学ぶ。

この単元の目標
  • 虚数単位 i の累乗を計算し、複素数の四則計算(特に共役を使った割り算)ができる
  • 判別式が負の二次方程式を解の公式で解き、共役な虚数解の形で表すことができる
  • 複素数の範囲でも解と係数の関係が成り立つことを使い、係数の問題を解くことができる
📑 目次
  1. 虚数単位 i と複素数
  2. 共役な複素数と割り算
  3. 虚数解をもつ二次方程式

虚数単位 i と複素数

i2=−1i^2=-1 を満たす数として虚数単位 ii を導入し、z=a+biz = a + bi(a,ba, b は実数)の形の数を複素数と呼びます。aa が実部、bb が虚部で、虚部は bibi ではありません。実数は b=0b=0 の場合として含まれます。加減は実部どうし・虚部どうしをまとめ、例えば (2+3i)+(1−5i)=3−2i(2+3i)+(1-5i)=3-2i。乗法は通常どおり展開して i2=−1i^2=-1 を使います。

i2=−1,i3=−i,i4=1i^2 = -1, \quad i^3 = -i, \quad i^4 = 1
n を 4 で割った余り0123
ini^n1i−1−i

ii の累乗は 4 周期で循環します。i2025i^{2025} のような大きな指数は、2025=4×506+12025 = 4 \times 506 + 1 と割り算して余りを見るだけで求められます。

共役な複素数と割り算

虚部の符号だけを変えた zˉ=a−bi\bar{z} = a - bi を zz の共役な複素数といいます。共役どうしの積は実数になり、これが複素数の割り算の鍵です。ただし 00 で割ることはできません。

🔍 なぜ「共役をかける」と分母が実数になるのか——導出

  1. Step 1: 共役どうしの積を展開する
    (a+bi)(a−bi)=a2−(bi)2=a2−b2i2=a2+b2(a + bi)(a - bi) = a^2 - (bi)^2 = a^2 - b^2 i^2 = a^2 + b^2

    (x+y)(x−y)=x2−y2(x+y)(x-y) = x^2 - y^2 の形。i2=−1i^2 = -1 がマイナスを打ち消し、0以上の実数 a2+b2a^2 + b^2 になる。a+bi≠0a+bi \ne 0 なら正の実数なので、分母にしてもよい。

  2. Step 2: 割り算に応用する
    a+bic+di=(a+bi)(c−di)(c+di)(c−di)=(ac+bd)+(bc−ad) ic2+d2\frac{a + bi}{c + di} = \frac{(a + bi)(c - di)}{(c + di)(c - di)} = \frac{(ac + bd) + (bc - ad)\,i}{c^2 + d^2}

    分母分子に分母の共役 c−dic - di を掛ける。分母は実数 c2+d2≠0c^2 + d^2 \ne 0 になり、実部・虚部に分離できる。

  3. Step 3: 検算の仕組み
    (a+bic+di)(c+di)=a+bi\left(\frac{a+bi}{c+di}\right)(c + di) = a + bi

    得られた商に割る数を掛けて元に戻れば計算は正しい。複素数の割り算はこの巻き戻し検算が簡単なので必ず行う。

例題1(複素数の乗除)

次を計算せよ。(1) (3+2i)(1−4i)(3 + 2i)(1 - 4i) (2) 2+3i1−2i\dfrac{2 + 3i}{1 - 2i}

解答・解説

(1) 11−10i11 - 10i (2) −45+75i-\dfrac{4}{5} + \dfrac{7}{5}i。【解説】(1) 展開して 3−12i+2i−8i2=3−10i+83 - 12i + 2i - 8i^2 = 3 - 10i + 8。(2) 分母分子に 1+2i1 + 2i を掛け、分子 (2+3i)(1+2i)=2+4i+3i+6i2=−4+7i(2+3i)(1+2i) = 2 + 4i + 3i + 6i^2 = -4 + 7i、分母 12+22=51^2 + 2^2 = 5。検算:(−45+75i)(1−2i)=−4+145+8+75i=2+3i\left(-\frac{4}{5} + \frac{7}{5}i\right)(1 - 2i) = \frac{-4+14}{5}+\frac{8+7}{5}i = 2+3i で元に戻る。

よくある誤解:(1) −2⋅−3=6\sqrt{-2} \cdot \sqrt{-3} = \sqrt{6} は誤り。実数の公式 ab=ab\sqrt{a}\sqrt{b} = \sqrt{ab} を負の数に無条件で使ってはいけない。−2−3=i2⋅i3=−6\sqrt{-2}\sqrt{-3} = i\sqrt{2} \cdot i\sqrt{3} = -\sqrt{6}。(2) zzˉ=a2+b2z\bar{z}=a^2+b^2 と z2z^2 は別物。例えば z=iz=i なら zzˉ=1z\bar{z}=1、z2=−1z^2=-1。(3) 実数係数の二次方程式が共役の組をもつのは非実数解の場合。実数解どうしが等しいという意味ではない。

虚数解をもつ二次方程式

実数係数の二次方程式 ax2+bx+c=0ax^2 + bx + c = 0(a≠0a \ne 0)の判別式 D=b2−4acD = b^2 - 4ac が負なら、実数解は存在しません。しかし −m=m i\sqrt{-m} = \sqrt{m}\,i (m>0m > 0) として、解の公式はそのまま使えます。D>0D>0 なら異なる2実数解、D=0D=0 なら重解、D<0D<0 なら異なる2虚数解です。

D=b2−4ac<0⇒x=−b±4ac−b2 i2aD = b^2 - 4ac < 0 \quad \Rightarrow \quad x = \frac{-b \pm \sqrt{4ac - b^2}\, i}{2a}

2つの解を α,β\alpha,\beta(重解は2回数える)とすると、ax2+bx+c=a(x−α)(x−β)=ax2−a(α+β)x+aαβax^2+bx+c=a(x-\alpha)(x-\beta)=ax^2-a(\alpha+\beta)x+a\alpha\beta。係数を比較すれば、複素数の範囲でも和は −b/a-b/a、積は c/ac/a と分かります。特に D<0D<0 では α=p+qi\alpha=p+qi、β=p−qi\beta=p-qi という共役な組(p,qp,q は実数)なので、

α+β=−ba=2p(実数),αβ=ca=p2+q2(実数)\alpha + \beta = -\frac{b}{a} = 2p \quad (\text{実数}), \qquad \alpha\beta = \frac{c}{a} = p^2 + q^2 \quad (\text{実数})
実数係数なら判別式が負でも、解の和と積は実数です。虚数部分が打ち消し合うためです。逆に、実数係数の二次方程式の解に 2+3i2+3i があるなら 2−3i2-3i も必ず解。最高次の係数を 11 にそろえれば、和と積から残りの係数が決まります。
例題2(虚数解の二次方程式と解と係数)

二次方程式 2x2+2x+5=02x^2 + 2x + 5 = 0 を解き、解と係数の関係で検算せよ。

解答・解説

x=−1±3i2x = \dfrac{-1 \pm 3i}{2}。【解説】D=22−4⋅2⋅5=−36<0D = 2^2 - 4 \cdot 2 \cdot 5 = -36 < 0、36=6\sqrt{36} = 6 より x=−2±6i4=−1±3i2x = \dfrac{-2 \pm 6i}{4} = \dfrac{-1 \pm 3i}{2}。検算:和 (−1+3i2)+(−1−3i2)=−1=−22=−ba\left(\frac{-1+3i}{2}\right) + \left(\frac{-1-3i}{2}\right) = -1 = -\frac{2}{2} = -\frac{b}{a}、積 (−1)2+324=104=52=ca\frac{(-1)^2 + 3^2}{4} = \frac{10}{4} = \frac{5}{2} = \frac{c}{a}。さらに代入確認:2(−1+3i2)2+2(−1+3i2)+5=1−6i−92+(−1+3i)+5=−4−3i−1+3i+5=02\left(\frac{-1+3i}{2}\right)^2 + 2\left(\frac{-1+3i}{2}\right) + 5 = \frac{1 - 6i - 9}{2} + (-1 + 3i) + 5 = -4 - 3i - 1 + 3i + 5 = 0。

練習
  1. 5+i2−i\dfrac{5 + i}{2 - i} を計算せよ。

    ヒント

    分母 2−i2 - i の共役は 2+i2 + i。分子に掛けてから i2=−1i^2 = -1 を処理する。

    解答・解説

    95+75i\dfrac{9}{5} + \dfrac{7}{5}i。分子 (5+i)(2+i)=10+5i+2i+i2=9+7i(5+i)(2+i) = 10 + 5i + 2i + i^2 = 9 + 7i、分母 22+12=52^2 + 1^2 = 5。検算:(95+75i)(2−i)=18+75+−9+145i=5+i\left(\frac{9}{5} + \frac{7}{5}i\right)(2 - i) = \frac{18 + 7}{5} + \frac{-9 + 14}{5}i = 5 + i。

  2. 二次方程式 x2−2x+5=0x^2 - 2x + 5 = 0 を解き、解と係数の関係で検算せよ。

    ヒント

    D=4−20=−16D = 4 - 20 = -16。16=4\sqrt{16} = 4 を使う。

    解答・解説

    x=1±2ix = 1 \pm 2i。和 2=−ba2 = -\frac{b}{a}、積 (1+2i)(1−2i)=1+4=5=ca(1+2i)(1-2i) = 1 + 4 = 5 = \frac{c}{a}。代入検算:(1+2i)2−2(1+2i)+5=(1+4i−4)−2−4i+5=0(1+2i)^2 - 2(1+2i) + 5 = (1 + 4i - 4) - 2 - 4i + 5 = 0。

  3. 実数係数の二次方程式 x2+px+q=0x^2 + px + q = 0 が解 x=2+3ix = 2 + 3i をもつとき、もう一方の解と p,qp, q の値を求めよ。

    ヒント

    係数が実数なら虚数解は共役の組で現れる。和・積を解と係数の関係に代入する。

    解答・解説

    もう一方の解 2−3i2 - 3i、p=−4p = -4、q=13q = 13。和 (2+3i)+(2−3i)=4=−p(2+3i) + (2-3i) = 4 = -p より p=−4p = -4、積 (2+3i)(2−3i)=4+9=13=q(2+3i)(2-3i) = 4 + 9 = 13 = q。よって x2−4x+13=0x^2 - 4x + 13 = 0。代入検算:(2+3i)2−4(2+3i)+13=4+12i−9−8−12i+13=0(2+3i)^2 - 4(2+3i) + 13 = 4 + 12i - 9 - 8 - 12i + 13 = 0。

確認クイズ

問1. i2025i^{2025} の値は?

問2. 二次方程式 x2+x+1=0x^2 + x + 1 = 0 の解は?

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