この単元の目標- 整式の除法を筆算(または組立除法)で実行し、商と余りを正しく求めることができる
- 剰余定理・因数定理を説明し、余りの計算や一次因数の判定に使うことができる
- 因数定理を繰り返し適用して三次方程式などの高次方程式を解くことができる
📑 目次
- 整式の除法——商と余り
- 剰余定理と因数定理
- 高次方程式の解き方
整式の除法——商と余り
整式の世界でも、整数の割り算と同様の原理が成り立ちます。割る式を G(x)=0、割られる式を P(x) とすると、商 Q(x) と余り R(x) がただ一つ決まります。余りは 0 であるか、次数が割る式の次数より小さい整式です。x の降べきの順に並べ、欠けた次数の項には係数 0 を補って計算しましょう。
🔍 なぜ筆算で商が決まるのか——「最高次を消し続ける」導出
- Step 1: 最高次を消す第1手
P(x)=2x3+3x2−x−5 を x−2 で割る。商の第1項は「最高次どうしの商」2x3÷x=2x2 と定まる。引けば x3 の項が消える。
- Step 2: 残りの次数が下がる
残った式の次数は 2 になった。1手ごとに次数が必ず 1 以上下がるので、有限回で終わる——これが手順が必ず止まる理由(停止性)。
- Step 3: 同様に繰り返す
7x2÷x=7x、13x÷x=13 を順に引く。次数が割る式の次数 1 未満になったら終了。
- Step 4: 結果の確認
右辺を展開すると 2x3+3x2−x−26+21 で一致する。余り 21 は定数(次数 0)で条件 degR<degG を満たす。
割る式が x−k の形のときは組立除法が速い。係数だけを並べ、左の k を順に掛けて足すだけ。x+k で割るときは k の代わりに −k を使う(割る式は x−(−k))。 例題1(整式の除法)
x3−2x2+3x−1 を x+1 で割ったときの商と余りを求めよ。
解答・解説
商 x2−3x+6、余り −7。【解説】x3÷x=x2、(−2−1)x2 から −3x、6x と進め (x+1)(x2−3x+6)=x3−2x2+3x+6。ここから元の式との差が −1−6=−7 で余り。検算:剰余定理より P(−1)=−1−2−3−1=−7 で一致。
剰余定理と因数定理
筆算をいちいちやらなくても、余りは 1 点の値で決まります。これが剰余定理で、商を実際に求めなくてよいところが強力です。
🔍 剰余定理・因数定理の導出
- Step 1: 除法の等式に代入する
割る式が一次式 x−k なら余り R は定数。x=k を代入すると (x−k) の項が消え、余りだけが残る。これが剰余定理。
- Step 2: 因数定理への翻訳
P(x) が x−k で割り切れる(因数をもつ)⟺ 余り 0 ⟺ P(k)=0。つまり「x=k を代入して 0 になるなら (x−k) は因数」。
- Step 3: 符号の確認
x+1 が因数か調べたいなら代入するのは x=−1。実際 P(x)=(x+1)(x+3)(x−2) と因数分解できる。
よくある誤解:(1) P(k) がそのまま余りになるのは x−k で割る場合。二次式で割る余りは一般に一次以下の整式で、1点の値だけでは決まらない。(2) x+3 で割るなら代入するのは x=3 ではなく x=−3。(3) 三次式を一次式で割った商は二次式。必ず「商×割る式+余り」を展開して検算する。 例題2(因数定理で係数を定める)
三次式 f(x)=x3−4x2+ax+b が x−1 と x+2 の両方で割り切れるとき、a,b の値を求め、f(x) を因数分解せよ。
解答・解説
a=−7,b=10、f(x)=(x−1)(x−5)(x+2)。【解説】因数定理より f(1)=1−4+a+b=0 すなわち a+b=3、f(−2)=−8−16−2a+b=0 すなわち −2a+b=24。第2式から第1式を引いて −3a=21 より a=−7、b=10。組立除法で f(x)=(x−1)(x2−3x−10)=(x−1)(x−5)(x+2)。検算:(x−1)(x+2)=x2+x−2、(x2+x−2)(x−5)=x3−4x2−7x+10 で一致。
高次方程式の解き方
因数定理は「解を見つける道具」であると同時に「方程式の次数を下げる道具」です。一次因数を 1 つ見つけるたびに、方程式の次数が 1 下がります。
- 候補を列挙する:まず定数項が 0 なら x をくくる。定数項が 0 でない整数係数の方程式では、整数解は定数項の約数。既約分数 u/v(v>0)が解なら、分子 u は定数項の約数、分母 v は最高次の係数の約数になる。有理数解がない場合もあり、そのとき候補探しだけでは解けない。
- 因数定理で判定する:候補を代入して 0 になったら (x−k) で割って次数を 1 下げる。
- 残った二次方程式を解く:因数分解または解の公式。虚数解が出ることもある(次のレッスン)。
練習
2x3+x2−5x+2 を x+1 で割ったときの商と余りを求めよ。
ヒント
割る式が x+1 なら剰余定理で代入するのは x=−1。商は筆算か組立除法で。
解答・解説
商 2x2−x−4、余り 6。検算:(x+1)(2x2−x−4)=2x3+x2−5x−4、これに余り 6 を足すと元の式。剰余定理でも P(−1)=−2+1+5+2=6。
x3+ax−2 が x−1 で割り切れるとき、a の値を求め、f(x) を因数分解せよ。
ヒント
f(1)=0 という条件を a について解く。そのあと商の二次式を調べる。
解答・解説
a=1(f(1)=1+a−2=0 より)。f(x)=x3+x−2=(x−1)(x2+x+2)。二次式 x2+x+2 は判別式 1−8=−7<0 で実数の一次因数をもたない。
方程式 2x3−3x2−3x+2=0 を解け。
ヒント
分子は定数項 2 の約数、分母は最高次の係数 2 の正の約数。候補 ±1,±2,±1/2 を代入してみよう。まず P(−1) はどうなるか。
解答・解説
x=−1,21,2。P(−1)=0 なので (x+1) で割ると 2x2−5x+2=(2x−1)(x−2)。よって 2x3−3x2−3x+2=(x+1)(2x−1)(x−2)。検算:x=2 のとき 16−12−6+2=0。
確認クイズ
問1. P(x)=x3+2x2−5x−6 を x+1 で割った余りは?
問2. 方程式 x3−6x2+11x−6=0 の解は?