恒等式・等式の証明と不等式の証明

係数比較で恒等式を扱い、両辺の差と平方の非負性から等式・不等式を証明する。相加相乗平均では条件と等号成立まで確認する。

この単元の目標
  • 恒等式と方程式を区別し、係数比較や数値代入で未知の係数を決定できる。
  • 等式の証明では一方の辺の変形や両辺の差を用い、不等式では実数の平方が非負であることを使える。
  • 相加相乗平均の非負条件と等号条件を確認し、最大値・最小値が実際に達成されることを説明できる。
📑 目次
  1. 1.恒等式は「すべての値で成り立つ」等式
  2. 2.等式の証明は「既知の事実から結論へ」
  3. 3.不等式は差を「非負の形」にする
  4. 4.相加相乗平均と適用条件
  5. 5.練習問題:条件と等号まで書こう

1.恒等式は「すべての値で成り立つ」等式

x2−1=(x−1)(x+1)x^2-1=(x-1)(x+1) はすべての実数 xx で成り立つ恒等式です。一方、x2−1=0x^2-1=0 は x=1,−1x=1,-1 のときだけ成り立つ方程式です。恒等式の問題では xx の値を求めるのではなく、すべての xx で等しくなるように係数を決めます。分数式なら、まず分母が0にならない共通の定義域を確認します。

ax2+bx+c=px2+qx+r(すべての実数 x)⟺a=p, b=q, c=rax^2+bx+c=px^2+qx+r\quad(\text{すべての実数 }x)\quad\Longleftrightarrow\quad a=p,\ b=q,\ c=r

🔍 係数比較の根拠を二次式で確かめる

  1. 両辺の差を取る
    (a−p)x2+(b−q)x+(c−r)=0(a-p)x^2+(b-q)x+(c-r)=0

    これがすべての実数 x で成り立つとする。

  2. x = 0, 1, −1 を代入
    c−r=0,(a−p)+(b−q)=0,(a−p)−(b−q)=0c-r=0,\quad(a-p)+(b-q)=0,\quad(a-p)-(b-q)=0

    恒等式だから、都合のよい値を自由に代入できる。

  3. 和と差から係数を決定
    a−p=0,b−q=0,c−r=0a-p=0,\quad b-q=0,\quad c-r=0

    逆に各係数が等しければ、両辺が同じ多項式になるので十分である。

例題1:展開して係数を比較する

(x+1)(ax+b)+c=2x2+5x+1(x+1)(ax+b)+c=2x^2+5x+1 が xx の恒等式となるように、実数 a,b,ca,b,c を求めよ。

解答・解説

左辺を展開すると ax2+(a+b)x+b+cax^2+(a+b)x+b+c。係数比較より a=2, a+b=5, b+c=1a=2,\ a+b=5,\ b+c=1 なので **a=2,b=3,c=−2a=2,b=3,c=-2**。戻して (x+1)(2x+3)−2=2x2+5x+1(x+1)(2x+3)-2=2x^2+5x+1 と展開できるため、すべての xx で成立することまで確認できた。

例題1で x=−1x=-1 を代入すれば直ちに c=−2c=-2。x=0x=0 なら b+c=1b+c=1 です。係数比較と数値代入を組み合わせてもかまいません。ただし、次数の制限もなく数個の値で一致しただけでは、恒等式であるとは証明できません。

2.等式の証明は「既知の事実から結論へ」

  1. 複雑な一方の辺を変形し、もう一方の辺に一致させる。
  2. 左右を別々に変形し、共通の式に一致させる。
  3. 左辺 − 右辺を計算して0にする。条件付きなら、途中で与えられた条件を使う。
例題2:条件を使って等式を証明する

実数 a,b,ca,b,c が a+b+c=0a+b+c=0 を満たすとき、a3+b3+c3=3abca^3+b^3+c^3=3abc を証明せよ。

解答・解説

条件から c=−(a+b)c=-(a+b)。左辺を変形すると a3+b3−(a+b)3=−3a2b−3ab2=−3ab(a+b)=3abca^3+b^3-(a+b)^3=-3a^2b-3ab^2=-3ab(a+b)=3abc。よって成立する。結論を仮定せず、条件と展開公式だけから右辺へ到達している。

証明したい等式を正しいと仮定し、変形して 0=00=0 が出ただけでは証明は未完成です。逆向きの変形も正しいと確認するか、一方の辺から書き直しましょう。また、a−ba-b で割るなら a=ba=b の場合を除いていないか確認が必要です。

3.不等式は差を「非負の形」にする

実数 tt について t2≥0t^2\ge0、等号は t=0t=0 のときだけ成立します。A≥BA\ge B を証明する基本方針は、A−BA-B を平方や平方の和に変形することです。等号がいつ成立するかは、非負である根拠と同時に調べます。

🔍 二つの実数の平方和を比較する

  1. 示したい不等式
    a2+b2≥2ab(a,b∈R)a^2+b^2\ge2ab\qquad(a,b\in\mathbb{R})
  2. 左辺から右辺を引く
    a2+b2−2ab=(a−b)2≥0a^2+b^2-2ab=(a-b)^2\ge0

    a, b は負でもよい。実数の平方の非負性を使っている。

  3. 等号を調べる
    (a−b)2=0⟺a=b(a-b)^2=0\quad\Longleftrightarrow\quad a=b

    不等式と等号条件を一組として答える。

平方の和なら、等号にはすべての平方が同時に0になることが必要です。たとえば (a−b)2+(b−c)2≥0(a-b)^2+(b-c)^2\ge0 の等号条件は a=b=ca=b=c。一つの平方が0でも、残りが正なら等号にはなりません。

4.相加相乗平均と適用条件

非負の実数 u,vu,v に対し、相加平均 (u+v)/2(u+v)/2 は相乗平均 uv\sqrt{uv} 以上です。平方根を用いるため、まず u≥0,v≥0u\ge0,v\ge0 を確認します。積 uvuv が非負というだけでは足りません。

🔍 平方の非負性から相加相乗平均を導く

  1. 非負の数の平方根を用意
    u≥0, v≥0⟹(u−v)2≥0u\ge0,\ v\ge0\quad\Longrightarrow\quad(\sqrt{u}-\sqrt{v})^2\ge0
  2. 展開して移項
    u+v−2uv≥0⟹u+v2≥uvu+v-2\sqrt{uv}\ge0\quad\Longrightarrow\quad\frac{u+v}{2}\ge\sqrt{uv}
  3. 等号成立条件
    u=v⟺u=v\sqrt{u}=\sqrt{v}\quad\Longleftrightarrow\quad u=v

    両方が0の場合も含む。正の数だけに限定された公式ではない。

u+v≥2uv(u,v≥0),等号成立は u=vu+v\ge2\sqrt{uv}\quad(u,v\ge0),\qquad\text{等号成立は }u=v
例題3:下限を示し、最小値の達成を確かめる

x>0x>0 のとき、x+9/xx+9/x の最小値と、そのときの xx を求めよ。

解答・解説

x>0x>0 なので xx と 9/x9/x はともに正。相加相乗平均より x+9/x≥2x⋅9/x=6x+9/x\ge2\sqrt{x\cdot9/x}=6。等号条件は x=9/xx=9/x、すなわち x2=9x^2=9。定義域から x=3x=3 であり、実際に 3+9/3=63+9/3=6。したがって **最小値は6、x=3x=3 のとき達成**する。x=−3x=-3 は定義域外なので採用しない。

最大値にも使える:和が一定のときの積

u,v≥0u,v\ge0 で u+v=10u+v=10 なら、5≥uv5\ge\sqrt{uv}。両辺が非負なので二乗して uv≤25uv\le25 です。等号は u=vu=v と和の条件が同時に成立する u=v=5u=v=5 のとき。よって積の最大値は25です。和の最小値だけでなく、和が一定なら積の最大値も求められます。

不等式で得た境界が、必ず最大値・最小値になるとは限りません。 例題3で範囲が x>3x>3 なら等号は達成されず、値は常に6より大きくなります。6にはいくらでも近づきますが最小値はありません。また、u=v=−1u=v=-1 には相加相乗平均を適用できません。実際、u+v=−2u+v=-2 は 2uv=22\sqrt{uv}=2 以上ではありません。

5.練習問題:条件と等号まで書こう

練習4問
  1. A(x−1)2+B(x−1)+C=3x2−2x+4A(x-1)^2+B(x-1)+C=3x^2-2x+4 が恒等式となるように A,B,CA,B,C を求めよ。

    ヒント

    左辺を展開すると Ax2+(−2A+B)x+(A−B+C)Ax^2+(-2A+B)x+(A-B+C)。

    解答・解説

    係数比較で A=3,−2A+B=−2,A−B+C=4A=3,-2A+B=-2,A-B+C=4。よって **A=3,B=4,C=5A=3,B=4,C=5**。代入すると 3(x−1)2+4(x−1)+5=3x2−2x+43(x-1)^2+4(x-1)+5=3x^2-2x+4 と確認できる。

  2. 実数 a,ba,b が a+b=1a+b=1 を満たすとき、a3+b3=1−3aba^3+b^3=1-3ab を証明せよ。

    ヒント

    (a+b)3(a+b)^3 を展開し、3a2b+3ab23a^2b+3ab^2 をくくる。

    解答・解説

    a3+b3=(a+b)3−3ab(a+b)a^3+b^3=(a+b)^3-3ab(a+b)。条件 a+b=1a+b=1 を代入して 1−3ab1-3ab となる。条件から結論へ変形したので証明が完了する。

  3. 実数 a,b,ca,b,c について a2+b2+c2≥ab+bc+caa^2+b^2+c^2\ge ab+bc+ca を証明し、等号条件を求めよ。

    ヒント

    両辺の差の2倍を、三つの差の平方和にする。

    解答・解説

    2(a2+b2+c2−ab−bc−ca)=(a−b)2+(b−c)2+(c−a)2≥02(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)=(a-b)^2+(b-c)^2+(c-a)^2\ge0。よって成立。等号は三つの平方がすべて0のとき、すなわち **a=b=ca=b=c** のときに限る。

  4. 0<x<80<x<8 のとき、x(8−x)x(8-x) の最大値と、そのときの xx を求めよ。

    ヒント

    xx と 8−x8-x はともに正で和が8。等号条件も範囲内か確認する。

    解答・解説

    相加相乗平均より 8≥2x(8−x)8\ge2\sqrt{x(8-x)}。両辺を2で割って二乗すると x(8−x)≤16x(8-x)\le16。等号は x=8−xx=8-x、つまり x=4x=4 で、0<4<80<4<8 を満たす。よって **最大値16、x=4x=4 のとき**。x(8−x)=16−(x−4)2x(8-x)=16-(x-4)^2 でも確認できる。

確認クイズ3問

問1. (a+1)x2+bx+2=3x2−4x+c(a+1)x^2+bx+2=3x^2-4x+c が恒等式のとき、(a,b,c)(a,b,c) は?

問2. 実数 u,vu,v に対して u+v≥2uvu+v\ge2\sqrt{uv} を相加相乗平均として適用できる条件は?

問3. 0<x<20<x<2 で (x−2)2≥0(x-2)^2\ge0 を使い、(x−2)2(x-2)^2 の最小値を考えた。正しい結論は?

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