三角方程式・不等式と角の区間管理

単位円の対称性と角の置き換えを使い、端点や周期による解の抜けを防ぐ。

この単元の目標
  • 角を半分にする操作や位相の移動に合わせて定義域を変換できる
  • 単位円の対称性から三角方程式の解をもれなく整理できる
  • 三角不等式で等号と元の区間を照合し、境界を正しく含められる
📑 目次
  1. 角の名前を変えると、動く範囲も変わる
  2. 単位円の座標と対称性から解を読む
  3. 不等式は点ではなく円周の弧を選ぶ
  4. 解集合を整理する最後の確認

角の名前を変えると、動く範囲も変わる

「弧度法と三角関数」で学んだ単位円と周期を、解集合を調べる道具として使います。θ\theta、θ/2\theta/2、θ+α\theta+\alpha は別々に自由に動く変数ではありません。置き換えたら、元の範囲の両端にも同じ操作をします。角はラジアンです。

元の条件置き換え新しい範囲と戻し方
0≤θ<2π0\le\theta<2\pit=θ/2t=\theta/20≤t<π0\le t<\pi、最後に θ=2t\theta=2t
0≤θ<2π0\le\theta<2\pit=θ+αt=\theta+\alphaα≤t<2π+α\alpha\le t<2\pi+\alpha、最後に θ=t−α\theta=t-\alpha
0≤θ<2π0\le\theta<2\pit=2θt=2\theta0≤t<4π0\le t<4\pi、最後に θ=t/2\theta=t/2

θ\theta が1周しても半角は半周しか進みません。逆に倍角は2周します。sin⁡(θ/2)\sin(\theta/2) の θ\theta に関する周期は 4π4\pi なので、θ\theta の値を無条件に 2π2\pi で折り返してはいけません。

単位円の座標と対称性から解を読む

単位円上の点を (cos⁡t,sin⁡t)(\cos t,\sin t) と見ると、正弦の条件は高さ、余弦の条件は横座標です。sin⁡t=c\sin t=c は水平線との交点を求める問題です。∣c∣>1|c|>1 なら交点がなく、解もありません。

θcos θ = x座標sin θ = y座標P第1象限: すべて+第2象限: sinのみ+第3象限: tanのみ+第4象限: cosのみ+
高さが同じ2点は縦軸に関して対称、横座標が同じ2点は横軸に関して対称。

🔍 同じ高さを持つ角の一般解を作る

  1. 1:基準になる角を1つ取る
    sin⁡β=c,−π2≤β≤π2(∣c∣≤1)\sin\beta=c,\qquad -\frac{\pi}{2}\le\beta\le\frac{\pi}{2}\quad (|c|\le1)

    この範囲に正弦が c になる角 β を1つ選ぶ。特殊角なら単位円から読める。

  2. 2:縦軸で反射した点を調べる
    sin⁡(π−β)=sin⁡β,cos⁡(π−β)=−cos⁡β\sin(\pi-\beta)=\sin\beta,\qquad \cos(\pi-\beta)=-\cos\beta

    横座標だけ反転するので同じ高さになる。水平線と円の交点は高々2つである。

  3. 3:周回分を足す
    t=β+2kπまたはt=π−β+2kπ,k∈Zt=\beta+2k\pi\quad\text{または}\quad t=\pi-\beta+2k\pi,\qquad k\in\mathbb Z

    各候補を指定区間と交わらせる。c=±1 では2系列が同じ解を表すため重複を除く。

余弦は横軸対称なので cos⁡t=cos⁡β\cos t=\cos\beta の解は t=±β+2kπt=\pm\beta+2k\pi(kk は整数)です。一般解を作ってから指定区間で絞ると、位相移動で 2π2\pi を超えた角も拾えます。正接なら周期は π\pi で、cos⁡t=0\cos t=0 の角は定義されません。

不等式は点ではなく円周の弧を選ぶ

sin⁡t≥1/2\sin t\ge1/2 なら高さ 1/21/2 以上の弧を選び、1周では π/6≤t≤5π/6\pi/6\le t\le5\pi/6 です。sin⁡t>1/2\sin t>1/2 なら両端を除きます。等号を含むかという条件と、元の定義域が端点を含むかという条件を、両方満たす必要があります。

sin⁡t≥12  ⟺  t∈⋃k∈Z[π6+2kπ,5π6+2kπ]\sin t\ge\frac12\iff t\in\bigcup_{k\in\mathbb Z}\left[\frac{\pi}{6}+2k\pi,\frac{5\pi}{6}+2k\pi\right]

合成を使うときは実数 a,ba,b が同時に0でないことを確認し、r=a2+b2>0r=\sqrt{a^2+b^2}>0 とします。acos⁡θ+bsin⁡θ=rsin⁡(θ+α)a\cos\theta+b\sin\theta=r\sin(\theta+\alpha) なら sin⁡α=a/r, cos⁡α=b/r\sin\alpha=a/r,\ \cos\alpha=b/r を同時に満たす角を選びます。rr で割っても不等号の向きは変わりません。両係数が0なら元の定数の不等式として判定します。

合成で t=θ+αt=\theta+\alpha とした後に、勝手に 0≤t<2π0\le t<2\pi としてはいけません。元が L≤θ<UL\le\theta<U なら L+α≤t<U+αL+\alpha\le t<U+\alpha です。位相を別の 2π2\pi 周期の代表に変えても、区間も同じだけ動かせば最終的な解は一致します。
例題1:半角の方程式

0≤θ<2π0\le\theta<2\pi で sin⁡(θ/2)=3/2\sin(\theta/2)=\sqrt3/2 を解け。

解答・解説

t=θ/2t=\theta/2 と置くと 0≤t<π0\le t<\pi。単位円で高さ 3/2\sqrt3/2 となるのは t=π/3, 2π/3t=\pi/3,\ 2\pi/3 です。θ=2t\theta=2t に戻して **θ=2π/3, 4π/3\theta=2\pi/3,\ 4\pi/3**。どちらも元の範囲内で、半角を代入すると高さが一致します。

例題2:合成した不等式と周期をまたぐ区間

0≤θ<2π0\le\theta<2\pi で cos⁡θ+sin⁡θ≥1\cos\theta+\sin\theta\ge1 を解け。

解答・解説

2sin⁡(θ+π/4)≥1\sqrt2\sin(\theta+\pi/4)\ge1。t=θ+π/4t=\theta+\pi/4 と置けば π/4≤t<9π/4\pi/4\le t<9\pi/4。この範囲で sin⁡t≥2/2\sin t\ge\sqrt2/2 となるのは π/4≤t≤3π/4\pi/4\le t\le3\pi/4 のみです。次の弧の始点 9π/49\pi/4 は範囲外。π/4\pi/4 を引いて **0≤θ≤π/20\le\theta\le\pi/2**。境界では元の左辺がどちらも1になります。

解集合を整理する最後の確認

  1. 元の定義域を書き、置き換えた角の区間も書く。必要なら複数周分の候補を作る。
  2. 単位円の対称性で相方の角を取り、方程式は点、不等式は弧として解く。
  3. 元の角に戻し、定義域との共通部分を取る。重複を除き、区間は小さい方から並べる。
  4. 境界を元の式に代入する。厳密な不等号なら等号の点は外し、定義域の開いた端も除く。
両辺を sin⁡θ\sin\theta や cos⁡θ\cos\theta で割ると、それが0の解を失うことがあります。不等式では割る量の符号も必要です。先に因数分解するか、0の場合と正負の場合を分けてください。
練習問題:対称性・周回・境界
  1. 0≤θ<2π0\le\theta<2\pi で cos⁡2θ=1/2\cos2\theta=1/2 を解け。

    ヒント

    t=2θt=2\theta の範囲は 0≤t<4π0\le t<4\pi。横座標 1/21/2 の点を2周分調べます。

    解答・解説

    t=π/3, 5π/3, 7π/3, 11π/3t=\pi/3,\ 5\pi/3,\ 7\pi/3,\ 11\pi/3。2で割り、θ=π/6, 5π/6, 7π/6, 11π/6\theta=\pi/6,\ 5\pi/6,\ 7\pi/6,\ 11\pi/6。4つとも元の範囲内です。

  2. 0≤θ<2π0\le\theta<2\pi で sin⁡(θ/2)≥1/2\sin(\theta/2)\ge1/2 を解け。

    ヒント

    0≤t=θ/2<π0\le t=\theta/2<\pi において、高さ 1/21/2 以上の弧を取ります。

    解答・解説

    π/6≤t≤5π/6\pi/6\le t\le5\pi/6 より π/3≤θ≤5π/3\pi/3\le\theta\le5\pi/3。両端は等号を満たし、元の範囲にも含まれます。

  3. 0≤θ<2π0\le\theta<2\pi で cos⁡θ≥1/2\cos\theta\ge1/2 を解け。

    ヒント

    単位円で横座標が 1/21/2 以上の弧は、指定区間の両端付近に分かれます。

    解答・解説

    0≤θ≤π/30\le\theta\le\pi/3 または 5π/3≤θ<2π5\pi/3\le\theta<2\pi。00 は含みますが、2π2\pi は元の定義域で除外されています。

確認クイズ:角の範囲と等号

問1. 0≤θ<2π0\le\theta<2\pi、t=θ−π/3t=\theta-\pi/3 のとき正しい範囲はどれか。

問2. 0≤θ<2π0\le\theta<2\pi で sin⁡θ>0\sin\theta>0 の解はどれか。

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