この単元の目標- 倍角・半角および和積・積和の公式を加法定理と結び付けて使える
- 合成の振幅と位相を係数比較で決め、係数のノルムとの関係を説明できる
- 半角の符号や合成後の区間を確認して計算できる
📑 目次
- 既習の加法定理を変形の道具にする
- 倍角と半角:角を変えても符号は自動では決まらない
- 積和・和積:加法定理を足す、引く
- 合成の導出:なぜ振幅は係数の長さなのか
既習の加法定理を変形の道具にする
「弧度法と三角関数」で学んだ加法定理を使います。ここではその証明を繰り返すのでなく、2つの角を等しくする、和と差を足し引きする、係数をそろえる、という3つの操作に注目します。角は特に断らない限りラジアンです。
倍角と半角:角を変えても符号は自動では決まらない
加法定理で2つの角をともに x とすれば倍角の公式です。余弦には sin2x+cos2x=1 を使った3通りの形があり、残したい関数に合わせて選びます。
余弦の倍角公式で x を θ/2 に置き換えて移項すると半角の公式です。以下の平方の形はすべての実数 θ で成立します。平方根を取る段階では、θ/2 がどの象限にあるかを調べて符号を選びます。
sin(θ/2)=(1−cosθ)/2 と常に正の平方根を取るのは誤りです。たとえば 2π<θ<3π なら π<θ/2<3π/2 なので正弦も余弦も負です。 積和・和積:加法定理を足す、引く
sin(u+v) と sin(u−v) を足せば余弦と正弦の一方の項が消えます。余弦でも同様に足し引きします。これが積を和へ直す積和公式の仕組みで、以下は実数 u,v に対して使えます。
逆に p=u+v, q=u−v と置けば u=(p+q)/2, v=(p−q)/2 です。和積公式の「平均の角」と「差の半分」は、この連立方程式から現れます。次の公式も実数 p,q で成立します。
和を積にすると「積が0ならどちらかが0」という方程式の解法に使えます。積を和にすると異なる角の積を分離できます。余弦の差の公式に付くマイナスは特に確認しましょう。
合成の導出:なぜ振幅は係数の長さなのか
実数係数 a,b が同時に0でないとします。asinx+bcosx を1つの正弦にまとめるには、右辺を加法定理で展開し、sinx と cosx の係数をそれぞれ一致させます。
🔍 係数比較と単位円から合成公式を作る
- 1:展開して係数を比較する
すべての x で等しい式にするので、2つの係数を同時に合わせる。
- 2:2乗して足す
振幅を正とする約束なら r=√(a²+b²)。これは係数ベクトル (a,b) の長さ(ノルム)であり、a²+b² はその長さの2乗である。
- 3:単位円上の点として位相を決める
右辺の2乗和は1なので、その座標を持つ角 α が存在する。α は 2π の整数倍の違いを除いて決まる。
係数の順序が変われば対応も変わります。acosθ+bsinθ を正弦へ合成するときの条件は次の通りです。α は例えば 0≤α<2π に1つ選びます。
tanα だけでは象限が決まりません。正弦・余弦の符号を両方確認します。また a=b=0 なら式は恒等的に0で、r=0 とできても a/r,b/r は使えません。この場合は別扱いです。 合成はすべての実数の角で成り立つ恒等式ですが、最大・最小や方程式には元の区間が影響します。L≤θ<U で t=θ+α と置けば L+α≤t<U+α。この区間で sint=±1 を実際に取るときだけ、最大・最小が ±r になります。
例題1:半角の符号まで求める
cosθ=3/5, 3π/2<θ<2π のとき、sin(θ/2) と cos(θ/2) を求めよ。
解答・解説
3π/4<θ/2<π より半角は第2象限。正弦は正、余弦は負です。したがって sin(θ/2)=(1−3/5)/2=1/5、cos(θ/2)=−(1+3/5)/2=−2/5。確認すると 2(1/5)(−2/5)=−4/5=sinθ です。
例題2:合成してから区間を移す
0≤x≤π/2 における 3sinx+cosx の最大値・最小値を求めよ。
解答・解説
r=2, cosα=3/2, sinα=1/2 より 2sin(x+π/6)。t=x+π/6 の範囲は π/6≤t≤2π/3 です。最大は t=π/2、すなわち x=π/3 で **2**。最小は両端を比較し、x=0 で **1**(もう一端は 3)。−2 はこの区間では取りません。
練習問題:公式の選択と条件
sinx=3/5, 0<x<π/2 のとき sin2x, cos2x を求めよ。
ヒント
第1象限なので cosx は正。余弦の倍角には 1−2sin2x が使えます。
解答・解説
cosx=4/5 より sin2x=2(3/5)(4/5)=24/25、cos2x=1−18/25=7/25。2乗和も1になります。
sin(5π/12)+sin(π/12) を和積公式で求めよ。
ヒント
2つの角の平均は π/4、差の半分は π/6 です。
解答・解説
2sin(π/4)cos(π/6)=2(2/2)(3/2)=6/2。
cosx−3sinx を rsin(x+α)(r>0, 0≤α<2π)に合成せよ。
ヒント
正弦の係数は rcosα、余弦の係数は rsinα です。
解答・解説
r=2, cosα=−3/2, sinα=1/2 より α=5π/6。答えは 2sin(x+5π/6)。第2象限を選ぶのがポイントです。
確認クイズ:符号とノルム
問1. π<θ<2π のとき cos(θ/2) はどれか。
問2. 実数全体で考える 3sinx+4cosx の振幅はどれか。