加法定理から倍角・半角・和積・合成へ

加法定理を出発点に式を変形し、係数の長さと位相から三角関数の合成を理解する。

この単元の目標
  • 倍角・半角および和積・積和の公式を加法定理と結び付けて使える
  • 合成の振幅と位相を係数比較で決め、係数のノルムとの関係を説明できる
  • 半角の符号や合成後の区間を確認して計算できる
📑 目次
  1. 既習の加法定理を変形の道具にする
  2. 倍角と半角:角を変えても符号は自動では決まらない
  3. 積和・和積:加法定理を足す、引く
  4. 合成の導出:なぜ振幅は係数の長さなのか

既習の加法定理を変形の道具にする

「弧度法と三角関数」で学んだ加法定理を使います。ここではその証明を繰り返すのでなく、2つの角を等しくする、和と差を足し引きする、係数をそろえる、という3つの操作に注目します。角は特に断らない限りラジアンです。

倍角と半角:角を変えても符号は自動では決まらない

加法定理で2つの角をともに xx とすれば倍角の公式です。余弦には sin⁡2x+cos⁡2x=1\sin^2x+\cos^2x=1 を使った3通りの形があり、残したい関数に合わせて選びます。

sin⁡2x=2sin⁡xcos⁡x,cos⁡2x=cos⁡2x−sin⁡2x=1−2sin⁡2x=2cos⁡2x−1\sin 2x=2\sin x\cos x,\qquad \cos 2x=\cos^2x-\sin^2x=1-2\sin^2x=2\cos^2x-1

余弦の倍角公式で xx を θ/2\theta/2 に置き換えて移項すると半角の公式です。以下の平方の形はすべての実数 θ\theta で成立します。平方根を取る段階では、θ/2\theta/2 がどの象限にあるかを調べて符号を選びます。

sin⁡2θ2=1−cos⁡θ2,cos⁡2θ2=1+cos⁡θ2\sin^2\frac{\theta}{2}=\frac{1-\cos\theta}{2},\qquad \cos^2\frac{\theta}{2}=\frac{1+\cos\theta}{2}
sin⁡(θ/2)=(1−cos⁡θ)/2\sin(\theta/2)=\sqrt{(1-\cos\theta)/2} と常に正の平方根を取るのは誤りです。たとえば 2π<θ<3π2\pi<\theta<3\pi なら π<θ/2<3π/2\pi<\theta/2<3\pi/2 なので正弦も余弦も負です。

積和・和積:加法定理を足す、引く

sin⁡(u+v)\sin(u+v) と sin⁡(u−v)\sin(u-v) を足せば余弦と正弦の一方の項が消えます。余弦でも同様に足し引きします。これが積を和へ直す積和公式の仕組みで、以下は実数 u,vu,v に対して使えます。

sin⁡ucos⁡v=sin⁡(u+v)+sin⁡(u−v)2,cos⁡usin⁡v=sin⁡(u+v)−sin⁡(u−v)2\sin u\cos v=\frac{\sin(u+v)+\sin(u-v)}{2},\quad \cos u\sin v=\frac{\sin(u+v)-\sin(u-v)}{2}
cos⁡ucos⁡v=cos⁡(u+v)+cos⁡(u−v)2,sin⁡usin⁡v=cos⁡(u−v)−cos⁡(u+v)2\cos u\cos v=\frac{\cos(u+v)+\cos(u-v)}{2},\quad \sin u\sin v=\frac{\cos(u-v)-\cos(u+v)}{2}

逆に p=u+v, q=u−vp=u+v,\ q=u-v と置けば u=(p+q)/2, v=(p−q)/2u=(p+q)/2,\ v=(p-q)/2 です。和積公式の「平均の角」と「差の半分」は、この連立方程式から現れます。次の公式も実数 p,qp,q で成立します。

sin⁡p+sin⁡q=2sin⁡p+q2cos⁡p−q2,sin⁡p−sin⁡q=2cos⁡p+q2sin⁡p−q2\sin p+\sin q=2\sin\frac{p+q}{2}\cos\frac{p-q}{2},\quad \sin p-\sin q=2\cos\frac{p+q}{2}\sin\frac{p-q}{2}
cos⁡p+cos⁡q=2cos⁡p+q2cos⁡p−q2,cos⁡p−cos⁡q=−2sin⁡p+q2sin⁡p−q2\cos p+\cos q=2\cos\frac{p+q}{2}\cos\frac{p-q}{2},\quad \cos p-\cos q=-2\sin\frac{p+q}{2}\sin\frac{p-q}{2}
和を積にすると「積が0ならどちらかが0」という方程式の解法に使えます。積を和にすると異なる角の積を分離できます。余弦の差の公式に付くマイナスは特に確認しましょう。

合成の導出:なぜ振幅は係数の長さなのか

実数係数 a,ba,b が同時に0でないとします。asin⁡x+bcos⁡xa\sin x+b\cos x を1つの正弦にまとめるには、右辺を加法定理で展開し、sin⁡x\sin x と cos⁡x\cos x の係数をそれぞれ一致させます。

🔍 係数比較と単位円から合成公式を作る

  1. 1:展開して係数を比較する
    rsin⁡(x+α)=rcos⁡αsin⁡x+rsin⁡αcos⁡x,rcos⁡α=a, rsin⁡α=br\sin(x+\alpha)=r\cos\alpha\sin x+r\sin\alpha\cos x,\quad r\cos\alpha=a,\ r\sin\alpha=b

    すべての x で等しい式にするので、2つの係数を同時に合わせる。

  2. 2:2乗して足す
    a2+b2=r2(cos⁡2α+sin⁡2α)=r2a^2+b^2=r^2(\cos^2\alpha+\sin^2\alpha)=r^2

    振幅を正とする約束なら r=√(a²+b²)。これは係数ベクトル (a,b) の長さ(ノルム)であり、a²+b² はその長さの2乗である。

  3. 3:単位円上の点として位相を決める
    r=a2+b2>0,cos⁡α=ar,sin⁡α=brr=\sqrt{a^2+b^2}>0,\quad \cos\alpha=\frac{a}{r},\quad \sin\alpha=\frac{b}{r}

    右辺の2乗和は1なので、その座標を持つ角 α が存在する。α は 2π の整数倍の違いを除いて決まる。

係数の順序が変われば対応も変わります。acos⁡θ+bsin⁡θa\cos\theta+b\sin\theta を正弦へ合成するときの条件は次の通りです。α\alpha は例えば 0≤α<2π0\le\alpha<2\pi に1つ選びます。

acos⁡θ+bsin⁡θ=rsin⁡(θ+α),r=a2+b2>0,sin⁡α=ar,cos⁡α=bra\cos\theta+b\sin\theta=r\sin(\theta+\alpha),\quad r=\sqrt{a^2+b^2}>0,\quad \sin\alpha=\frac{a}{r},\quad \cos\alpha=\frac{b}{r}
tan⁡α\tan\alpha だけでは象限が決まりません。正弦・余弦の符号を両方確認します。また a=b=0a=b=0 なら式は恒等的に0で、r=0r=0 とできても a/r,b/ra/r,b/r は使えません。この場合は別扱いです。

合成はすべての実数の角で成り立つ恒等式ですが、最大・最小や方程式には元の区間が影響します。L≤θ<UL\le\theta<U で t=θ+αt=\theta+\alpha と置けば L+α≤t<U+αL+\alpha\le t<U+\alpha。この区間で sin⁡t=±1\sin t=\pm1 を実際に取るときだけ、最大・最小が ±r\pm r になります。

例題1:半角の符号まで求める

cos⁡θ=3/5, 3π/2<θ<2π\cos\theta=3/5,\ 3\pi/2<\theta<2\pi のとき、sin⁡(θ/2)\sin(\theta/2) と cos⁡(θ/2)\cos(\theta/2) を求めよ。

解答・解説

3π/4<θ/2<π3\pi/4<\theta/2<\pi より半角は第2象限。正弦は正、余弦は負です。したがって sin⁡(θ/2)=(1−3/5)/2=1/5\sin(\theta/2)=\sqrt{(1-3/5)/2}=1/\sqrt5、cos⁡(θ/2)=−(1+3/5)/2=−2/5\cos(\theta/2)=-\sqrt{(1+3/5)/2}=-2/\sqrt5。確認すると 2(1/5)(−2/5)=−4/5=sin⁡θ2(1/\sqrt5)(-2/\sqrt5)=-4/5=\sin\theta です。

例題2:合成してから区間を移す

0≤x≤π/20\le x\le\pi/2 における 3sin⁡x+cos⁡x\sqrt3\sin x+\cos x の最大値・最小値を求めよ。

解答・解説

r=2, cos⁡α=3/2, sin⁡α=1/2r=2,\ \cos\alpha=\sqrt3/2,\ \sin\alpha=1/2 より 2sin⁡(x+π/6)2\sin(x+\pi/6)。t=x+π/6t=x+\pi/6 の範囲は π/6≤t≤2π/3\pi/6\le t\le2\pi/3 です。最大は t=π/2t=\pi/2、すなわち x=π/3x=\pi/3 で **2**。最小は両端を比較し、x=0x=0 で **1**(もう一端は 3\sqrt3)。−2-2 はこの区間では取りません。

練習問題:公式の選択と条件
  1. sin⁡x=3/5, 0<x<π/2\sin x=3/5,\ 0<x<\pi/2 のとき sin⁡2x, cos⁡2x\sin2x,\ \cos2x を求めよ。

    ヒント

    第1象限なので cos⁡x\cos x は正。余弦の倍角には 1−2sin⁡2x1-2\sin^2x が使えます。

    解答・解説

    cos⁡x=4/5\cos x=4/5 より sin⁡2x=2(3/5)(4/5)=24/25\sin2x=2(3/5)(4/5)=24/25、cos⁡2x=1−18/25=7/25\cos2x=1-18/25=7/25。2乗和も1になります。

  2. sin⁡(5π/12)+sin⁡(π/12)\sin(5\pi/12)+\sin(\pi/12) を和積公式で求めよ。

    ヒント

    2つの角の平均は π/4\pi/4、差の半分は π/6\pi/6 です。

    解答・解説

    2sin⁡(π/4)cos⁡(π/6)=2(2/2)(3/2)=6/22\sin(\pi/4)\cos(\pi/6)=2(\sqrt2/2)(\sqrt3/2)=\sqrt6/2。

  3. cos⁡x−3sin⁡x\cos x-\sqrt3\sin x を rsin⁡(x+α)r\sin(x+\alpha)(r>0, 0≤α<2πr>0,\ 0\le\alpha<2\pi)に合成せよ。

    ヒント

    正弦の係数は rcos⁡αr\cos\alpha、余弦の係数は rsin⁡αr\sin\alpha です。

    解答・解説

    r=2, cos⁡α=−3/2, sin⁡α=1/2r=2,\ \cos\alpha=-\sqrt3/2,\ \sin\alpha=1/2 より α=5π/6\alpha=5\pi/6。答えは 2sin⁡(x+5π/6)2\sin(x+5\pi/6)。第2象限を選ぶのがポイントです。

確認クイズ:符号とノルム

問1. π<θ<2π\pi<\theta<2\pi のとき cos⁡(θ/2)\cos(\theta/2) はどれか。

問2. 実数全体で考える 3sin⁡x+4cos⁡x3\sin x+4\cos x の振幅はどれか。

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