内積空間と直交性
内積・ノルムから直交化(グラム・シュミット)へ。対称行列の固有値問題と最小二乗法。
- 内積からノルム・距離・角度を定義できる
- グラム・シュミットの直交化を実行できる
- 実対称行列が直交行列で対角化できることを説明できる
内積とノルム
ここでは実ベクトルの標準内積を扱います。内積は「ベクトル空間に長さと角度を入れる装置」です。 のとき直交といいます。角度やコサイン類似度の式には が必要です。零ベクトルとの角度は定義しません。
正規直交基底とグラム・シュミット
互いに直交する単位ベクトルの組(正規直交系) を基底にすると座標が だけで読み取れて計算が劇的に楽になります。任意の独立なベクトル列はグラム・シュミットの直交化で正規直交系に変換できます。
直交行列と対称行列
- 直交行列 :(列ベクトルが正規直交系)。ノルムと内積を保存する回転・鏡映
- 実対称行列 () の固有値は必ず実数で、異なる固有値に属する固有ベクトルは直交
- スペクトル定理:実対称行列は直交行列で対角化できる
応用の代表が最小二乗法です。 を実 行列として、誤差の二乗和 を最小にします。正規方程式は 。 の列が一次独立のときに限り は正則で、一意解 を得ます。列が従属なら係数 は一意ではありませんが、近似値 ( の列空間への正射影)は一意です。
🔍 残差の直交性から正規方程式を導く
- 候補から任意の方向へ動かす
内積の分配法則で二乗を展開します。最小点では、どちら向きの微小変化でも値が減ってはいけません。
- 一次の項を消す
残差が A のすべての列に直交するという条件です。このとき変化量は なので、確かに最小値となります。
- 一意性の条件を確かめる
列が一次独立なら非零 h に対し Ah は非零となります。この正定値性が逆行列と一意解を保証します。
, をグラム・シュミットで正規直交化せよ。
解答・解説
。 より ****
, を正規直交化せよ。
ヒント
第 2 ベクトルから第 1 ベクトル方向の射影を引く。
解答・解説
。内積は だから 。ノルム で割って 。内積は 0、各ノルムは 1 で検算できる。
データ に最小二乗直線 をあてはめよ。
ヒント
の各行を 、観測値を とする。
解答・解説
、。, より , 。求める直線は 。残差 は と の両方に直交する。
、 の最小二乗解をすべて求めよ。
ヒント
とおいて誤差を平方完成する。
解答・解説
誤差は 。よって を満たすすべての が解で、最小誤差は 2。 は正則ではなく逆行列の公式は使えないが、正射影 は一意に決まる。