行列の分解——LU・QR・特異値分解
数値計算を支える三大分解。特異値分解はデータ解析(PCA)の心臓部。
この単元の目標
- LU 分解による連立一次方程式の効率的な解法を説明できる
- QR 分解と最小二乗法の関係を理解している
- 特異値分解 の構造と意味を説明できる
LU 分解
行交換なしに消去できる場合は (下三角 × 上三角)。一般の正則行列では行交換を表す置換行列 P を用いた を使い、右辺にも P を掛けます。分解した L と U を一度求めてしまえば、異なる右辺 に対する を前進代入・後退代入の 2 回の三角行列計算だけで解けます。係数行列が同じで右辺が多数ある問題(構造解析など)で威力を発揮します。
QR 分解
ここでは で列が一次独立な実行列の薄い QR 分解を扱います。Q は列が正規直交系ですが、m>n では正方行列ではありません。グラム・シュミットやハウスホルダー変換で求めます。最小二乗問題 は と三角行列の後退代入に帰着し、固有値問題の QR 法では、正方行列を QR 分解して積を RQ に入れ替える相似変換を反復します。
特異値分解(SVD)
どのような長方形行列にも必ず存在する分解で、「 は直交変換 → 座標軸方向の伸縮(特異値 )→ 直交変換」を表します。最大特異値 は がベクトルを最も引き延ばす割合です。
- 低ランク近似:大きい方から 個の特異値だけ残した が、ランク 以下の行列の中で誤差 最小(エッカート・ヤングの定理)
- 主成分分析(PCA):各列を平均 0 に中心化したデータ行列(行=観測、列=変数)を SVD すると分散最大の方向が右特異ベクトルとして得られる
- 画像圧縮・ノイズ除去・推薦システムなどへの応用
固有値分解は正方形行列(さらに対角化可能なもの)限定ですが、SVD は任意の行列に存在します。両者は , の固有値問題を通じてつながっています(特異値² = 固有値)。
例題
の特異値を求めよ。また、 と特異値の積の関係は?
解答・解説
対角成分が非負なので特異値はその成分そのもの ****。一般に (ここでは 6)。特異値の積は「単位立方体が写される平行体の体積」
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