ラプラス変換——微分方程式を代数方程式に変える

時間領域の微分方程式を s 領域の代数計算に落とす積分変換。部分分数展開で元に戻す。

この単元の目標
  • ラプラス変換の定義と基本公式(線形性・指数・冪・三角関数)を使いこなせる
  • 微分の性質により初期値問題が代数方程式に帰着することを説明できる
  • 部分分数展開で逆ラプラス変換を実行して微分方程式を解ける
📑 目次
  1. ラプラス変換とは
  2. 基本公式表
  3. 微分方程式への応用——解く流れ

ラプラス変換とは

ラプラス変換は、時間の関数 f(t)f(t) を複素数 ss の関数 F(s)F(s) へ写しかえる積分変換です。目的は微分方程式の攻略。変換の世界では微分が「$s$ を掛ける操作」に置き換わり、面倒な微分方程式が代数方程式に変わります(定数係数の線形微分方程式の場合)。さらに初期値が変換の時点で式の中に組み込まれるため、「一般解を出してから定数を決める」という手順が丸ごと不要になります。

L{f}(s)=F(s)=∫0∞e−stf(t) dt(Re s が十分大きいとき収束)\mathcal{L}\{f\}(s) = F(s) = \int_0^{\infty} e^{-st} f(t)\, dt \qquad (\text{Re}\, s \text{ が十分大きいとき収束})

基本公式表

f(t)F(s) = L{f}
111s\dfrac{1}{s}
eate^{at}1s−a\dfrac{1}{s-a}
tnt^n(n は非負整数)n!sn+1\dfrac{n!}{s^{n+1}}
sin⁡ωt\sin \omega tωs2+ω2\dfrac{\omega}{s^2 + \omega^2}
cos⁡ωt\cos \omega tss2+ω2\dfrac{s}{s^2 + \omega^2}
L{af+bg}=aF+bG,L{f′}=sF(s)−f(0)\mathcal{L}\{af + bg\} = aF + bG, \qquad \mathcal{L}\{f'\} = sF(s) - f(0)

🔍 微分の性質 L{f-prime} = sF − f(0) を部分積分で導く

  1. Step 1: 定義に f の代わりに f-prime を入れる
    L{f′}=∫0∞e−stf′(t) dt\mathcal{L}\{f'\} = \int_0^{\infty} e^{-st} f^{\prime}(t)\, dt

    右辺を部分積分にかけるのが方針。u = e^{-st}, dv = f-prime dt と置く。

  2. Step 2: 部分積分を実行する
    ∫0∞e−stf′(t) dt=[e−stf(t)]0∞+s∫0∞e−stf(t) dt\int_0^{\infty} e^{-st} f^{\prime}(t)\, dt = \Bigl[ e^{-st} f(t) \Bigr]_0^{\infty} + s \int_0^{\infty} e^{-st} f(t)\, dt

    ∫u dv = uv − ∫ v du で、du = −s e^{-st} dt だから第 2 項に +s が現れる。

  3. Step 3: 境界項を評価して結論
    [e−stf(t)]0∞=0−f(0)⟹L{f′}=sF(s)−f(0)\Bigl[ e^{-st} f(t) \Bigr]_0^{\infty} = 0 - f(0) \quad\Longrightarrow\quad \mathcal{L}\{f^{\prime}\} = sF(s) - f(0)

    十分大きな t で |f(t)| ≤ C e^{at} と評価でき、Re s > a なら t → ∞ で e^{-st} f(t) → 0。二階の導関数にも繰り返せば L{f-double-prime} = s²F − s f(0) − f-prime(0)。微分が掛け算に変わる正体はこの部分積分です。

🔍 sin の変換公式——複素指数を許すだけで出てくる

  1. Step 1: 指数関数の変換を複素数 a に拡張
    ∫0∞e−steat dt=[e−(s−a)t−(s−a)]0∞=1s−a\int_0^{\infty} e^{-st} e^{at}\, dt = \left[ \frac{e^{-(s-a)t}}{-(s-a)} \right]_0^{\infty} = \frac{1}{s - a}

    a を虚数 iω まで認めても収束の議論は同じ(Re s > Re a)。

  2. Step 2: オイラーの公式で sin を分解
    sin⁡ωt=eiωt−e−iωt2i\sin \omega t = \frac{e^{i\omega t} - e^{-i\omega t}}{2i}

    三角関数を複素指数の組に読み替える。線形性ですぐ変換できる。

  3. Step 3: 代入して通分
    L{sin⁡ωt}=12i(1s−iω−1s+iω)=ωs2+ω2\mathcal{L}\{\sin \omega t\} = \frac{1}{2i} \left( \frac{1}{s - i\omega} - \frac{1}{s + i\omega} \right) = \frac{\omega}{s^2 + \omega^2}

    分母の差が 2iω になり 2i と打ち消し合う。cos も同様に s/(s² + ω²)。公式表を丸暗記しなくても導出は 3 行で終わります。

微分方程式への応用——解く流れ

  • 両辺をラプラス変換する → 微分方程式が Y(s)Y(s) の代数方程式になる
  • Y(s)Y(s) について解く → 有理関数(多項式の比)になる
  • 部分分数展開で基本公式表の形に分解する
  • 逆変換して y(t)y(t) を得る——初期値は最初から反映済み
例題(一階線形の初期値問題)

y′+2y=e3ty' + 2y = e^{3t}, y(0)=0y(0) = 0 をラプラス変換で解け。

解答・解説

変換すると (s+2)Y=1s−3(s + 2)Y = \dfrac{1}{s - 3} より Y=1(s−3)(s+2)Y = \dfrac{1}{(s - 3)(s + 2)}。部分分数展開 Y=15(1s−3−1s+2)Y = \dfrac{1}{5}\left( \dfrac{1}{s - 3} - \dfrac{1}{s + 2} \right) から **y=15(e3t−e−2t)y = \dfrac{1}{5}\left( e^{3t} - e^{-2t} \right)**。強制項のモード e3te^{3t} と固有モード(過渡応答)e−2te^{-2t} が分解されて現れる。

練習問題
  1. L{3t2+2e−t}\mathcal{L}\{3t^2 + 2e^{-t}\} を求めよ。

    ヒント

    線形性。L{t2}=2!/s3\mathcal{L}\{t^2\} = 2!/s^3。

    解答・解説

    6s3+2s+1\dfrac{6}{s^3} + \dfrac{2}{s + 1}(Re s > 0)

  2. F(s)=1(s+1)(s+3)F(s) = \dfrac{1}{(s + 1)(s + 3)} の逆ラプラス変換を求めよ。

    ヒント

    1(s+1)(s+3)=As+1+Bs+3\dfrac{1}{(s+1)(s+3)} = \dfrac{A}{s+1} + \dfrac{B}{s+3} とおいて分子を比較。

    解答・解説

    ヘビサイドの公式で A=lim⁡s→−1(s+1)F(s)=1−1+3=12A = \lim_{s \to -1}(s+1)F(s) = \dfrac{1}{-1+3} = \dfrac{1}{2}、B=lim⁡s→−3(s+3)F(s)=1−3+1=−12B = \lim_{s \to -3}(s+3)F(s) = \dfrac{1}{-3+1} = -\dfrac{1}{2}。よって **f(t)=12(e−t−e−3t)f(t) = \dfrac{1}{2}\left( e^{-t} - e^{-3t} \right)**。t=0t = 0 で f(0)=0f(0) = 0 となるので検算も取れる。

  3. y′′+4y=0y'' + 4y = 0, y(0)=1y(0) = 1, y′(0)=0y'(0) = 0 を解け。

    ヒント

    L{y′′}=s2Y−s y(0)−y′(0)\mathcal{L}\{y''\} = s^2 Y - s\,y(0) - y'(0)。

    解答・解説

    (s2+4)Y=s(s^2 + 4)Y = s より Y=ss2+4Y = \dfrac{s}{s^2 + 4}。公式表に戻して **y=cos⁡2ty = \cos 2t**。微分方程式を一度も積分せずに解けたことに注意。

確認クイズ(ラプラス変換)

問1. ラプラス変換が微分方程式を解きやすくする理由は?

問2. L{1}\mathcal{L}\{1\} はいくつか。

問3. 初期値 f(0) はいつ登場するか。

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