重積分——累次積分・領域の読み替え・座標変換

2 重積分の計算技術。積分順序の交換、極座標への変換とヤコビアン r、面積・体積への応用。

この単元の目標
  • 矩形領域・非矩形領域上の 2 重積分を累次積分として実行できる
  • 積分順序の交換が必要になる場面を判断し、実際に書き換えられる
  • 極座標変換(dxdy = r dr dθ)を使って円に関する積分を処理できる

重積分の意味と累次積分

2 重積分 ∬Df(x,y) dA\iint_D f(x, y)\, dA は、平面上の領域 D の上に立つ柱の体積(f≥0f \ge 0 のとき)、あるいは密度分布 ff から D の総質量を求める操作です。計算は累次積分に落とします。内側の積分で片方の変数を固定して切り出し、その結果を外側の変数で積算する——「薄く切って、切れ目ごとに足し上げる」2 段構えです。

∬Df(x,y) dx dy=∫ab[∫p(x)q(x)f(x,y) dy]dx\iint_D f(x, y)\, dx\, dy = \int_a^b \left[ \int_{p(x)}^{q(x)} f(x, y)\, dy \right] dx

積分順序の交換

内側の原始関数が初等関数で書けないことがあります。たとえば e−y2e^{-y^2} は yy について積分できませんが、先に xx で積分すると話が変わります。領域を「縦割り」から「横割り」に読み替えて積分の順序を入れ替えるのが積分順序の交換(フビニの定理)の力で、例えば有界な領域の閉包上で連続なら交換できます。非有界な領域では絶対可積分性などの条件を確かめます。

🔍 極座標での面積要素 dxdy = r dr dθ の由来

  1. Step 1: 極座標での位置
    x=rcos⁡θ,y=rsin⁡θx = r \cos\theta, \qquad y = r \sin\theta

    平面の点を「原点からの距離 r」と「角度 θ」で指定し直す。

  2. Step 2: 微小変化の接ベクトル
    ∂(x,y)∂r=(cos⁡θ,sin⁡θ),∂(x,y)∂θ=(−rsin⁡θ,rcos⁡θ)\frac{\partial (x, y)}{\partial r} = (\cos\theta, \sin\theta), \qquad \frac{\partial (x, y)}{\partial \theta} = (-r \sin\theta, r \cos\theta)

    r 方向に動けば単位ベクトルだけ進むが、θ 方向に動くと半径 r の円弧に沿って動く。

  3. Step 3: 小さな平行四辺形の面積=外積の絶対値
    dA=∣det⁡(cos⁡θ−rsin⁡θsin⁡θrcos⁡θ)∣dr dθ=r dr dθdA = \left| \det \begin{pmatrix} \cos\theta & -r \sin\theta \\ \sin\theta & r \cos\theta \end{pmatrix} \right| dr\, d\theta = r\, dr\, d\theta

    この行列がヤコビ行列で、その行列式がヤコビアン。角度方向の辺の長さが半径 r に比例して伸びるため、因子 r が現れる——扇形の面積 r²θ/2(θ はラジアン) という中学レベルの事実と一致します。

例題(ガウス積分)

ガウス積分 ∫−∞∞e−x2 dx\displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} e^{-x^2}\, dx を求めよ。

解答・解説

2 乗して極座標変換:I2=∬e−(x2+y2) dxdy=∫02π ⁣ ⁣∫0∞e−r2r dr dθ=2π⋅12=πI^2 = \iint e^{-(x^2+y^2)}\, dxdy = \int_0^{2\pi}\!\!\int_0^{\infty} e^{-r^2} r\, dr\, d\theta = 2\pi \cdot \frac{1}{2} = \pi。よって I=πI = \sqrt{\pi}。初等的な原始関数だけでは難しかった計算が、次元を上げて座標変換することで解ける好例。

練習問題
  1. ∫01 ⁣ ⁣∫01(x2+y) dy dx\displaystyle \int_0^1 \!\! \int_0^1 (x^2 + y)\, dy\, dx を計算せよ。

    ヒント

    内側から。x を固定して y で積分。

    解答・解説

    内側:∫01(x2+y) dy=x2+12\int_0^1 (x^2 + y)\, dy = x^2 + \frac{1}{2}。外側:∫01(x2+12)dx=13+12=\int_0^1 \left( x^2 + \frac{1}{2} \right) dx = \frac{1}{3} + \frac{1}{2} = **56\frac{5}{6}**

  2. ∫02 ⁣ ⁣∫x2sin⁡(y2) dy dx\displaystyle \int_0^2 \!\! \int_x^2 \sin(y^2)\, dy\, dx の積分順序を交換して計算せよ。

    ヒント

    領域は 0 ≤ x ≤ y ≤ 2。横割りに読み替える。

    解答・解説

    順序を入れ替えると ∫02 ⁣ ⁣∫0ysin⁡(y2) dx dy=∫02ysin⁡(y2) dy=[−cos⁡(y2)2]02=1−cos⁡42\int_0^2 \!\! \int_0^y \sin(y^2)\, dx\, dy = \int_0^2 y \sin(y^2)\, dy = \left[ -\frac{\cos(y^2)}{2} \right]_0^2 = \frac{1 - \cos 4}{2}

  3. 半径 R の円板の面積を極座標の重積分で求めよ。

    ヒント

    ∬Dr dr dθ\iint_D r\, dr\, d\theta、0≤r≤R0 \le r \le R, 0≤θ≤2π0 \le \theta \le 2\pi。

    解答・解説

    ∫02π ⁣ ⁣∫0Rr dr dθ=2π⋅R22=\int_0^{2\pi} \!\! \int_0^R r\, dr\, d\theta = 2\pi \cdot \frac{R^2}{2} = **πR2\pi R^2**。円周率の公式が重積分から自然に出てくる。

  4. z = x² + y² と z = 4 で囲まれた放物面の皿の体積を求めよ。

    ヒント

    高さは 4 − (x² + y²)。円板 x² + y² ≤ 4 上で積分し極座標へ。

    解答・解説

    V=∬(4−x2−y2) dxdy=∫02π ⁣ ⁣∫02(4−r2)r dr dθ=2π[2r2−r44]02=2π(8−4)=V = \iint (4 - x^2 - y^2)\, dxdy = \int_0^{2\pi}\!\!\int_0^2 (4 - r^2) r\, dr\, d\theta = 2\pi \left[ 2r^2 - \frac{r^4}{4} \right]_0^2 = 2\pi(8 - 4) = **8π8\pi**

確認クイズ(重積分)

問1. 極座標に変換したときの面積要素はどれか。

問2. 積分順序を交換したくなる典型的な理由は?

問3. f ≥ 0 のとき ∬_D f dA は何を表すか。

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