多変数関数の極値とラグランジュの未定乗数法
ヘッセ行列による極値の判別、制約付き最適化を未定乗数法で解く。
- 二次偏導関数からヘッセ行列をつくり、極大・極小・鞍点を判別できる
- 制約つき最大化・最小化をラグランジュの未定乗数法で解ける
- 未定乗数法の幾何学的意味(勾配の平行条件)を説明できる
極値問題の準備——テイラー近似とヘッセ行列
開領域で二階偏導関数が連続な関数 を考えます。内点の極値候補は、一次の微分がすべて消える停留点 に限ります。その点が本当に山の頂上か谷底か、それとも馬の鞍のような鞍点かを見分けるのが二次微分の情報、すなわちヘッセ行列です。1 変数のとき「 かつ なら極小」だったのと同じ役割を、行列が引き継いでいます。
- かつ :極小(ヘッセ行列が正定値=どの方向に歩いても増える)
- かつ :極大(負定値=どの方向に歩いても減る)
- :鞍点(ある方向では増え、別の方向では減る)
- :この判定では決められない(高次の項を調べる必要がある)
🔍 なぜ判別式 D で極値がわかるのか——2 次のテイラー展開
- Step 1: 停留点のまわりで 2 次まで展開する
停留点では一次の項(勾配)が消えるので、二次形式が正定値・負定値・不定符号なら、その符号が十分近くでの増減を決めます。退化する場合は高次項も必要です。
- Step 2: 平方完成する
の場合の平方完成です。, なら なので、混合項から直接二次形式が正負両方の値をとると分かります。
- Step 3: 符号を読み取る
二つの平方項は非負で、 なら少なくとも一方は正です。二次形式の正定値性により十分小さな変位では高次の剰余より二次項が支配的となり、極小が従います。 なら方向によって二次形式の符号が変わり鞍点です。
ラグランジュの未定乗数法
🔍 なぜ「勾配が平行」でよいのか——等高線の幾何学
- Step 1: 制約は曲線、目的関数は等高線
曲線上を動きながら f の値をできるだけ大きくしたい状況を考える。
- Step 2: 勾配は等高線に垂直
勾配ベクトルの定義から、関数が最も急増加する方向は等高線の法線方向。
- Step 3: 制約曲線に沿った方向微分が消える
制約曲線に沿って動いている間、極值では f の値が一時的に変化しなくなる。つまり ∇f は曲線の接線と直交。
- Step 4: ∇g が非零なら、法線方向はそのスカラー倍
が連続微分可能で の点では、∇g は制約曲線の法線だから、∇f はそのスカラー倍。比例定数 λ が「未定乗数」。これと制約式を連立すれば未知数 3 個の連立方程式から候補を探せます。必要条件なので、候補の値の比較や特異点・境界の確認を別に行います。
周囲の長さが 20 m の長方形のうち、面積を最大にするものを未定乗数法で求めよ。
解答・解説
, 制約 。 より , 、ゆえに 。制約を代入すると 。よって面積は **最大 25 平方メートル**(正方形が最適)。
の極値を求めよ。
ヒント
, 。実数解は と 。
解答・解説
。 では で**鞍点**。 では , で**極小値 **
を円周 上で最大・最小にせよ。
ヒント
, より 。
解答・解説
で**最大 **、 で**最小 **。(コーシー・シュワルツの等号条件と一致)
体積 V が一定の直方体のうち表面積を最小にするものの形状を述べよ。
ヒント
の下で を最小化。
解答・解説
**立方体(すべての辺が等しい)**。対称性から が解となり、これは不等式 の等号ケースにも対応する。
問1. 停留点で D < 0 のとき、その点は何と呼ばれるか。
問2. ラグランジュの未定乗数法の条件 ∇f = λ∇g は何を表すか。
問3. 二階偏導関数が連続な関数の停留点で、ヘッセ行列が正定値ならどうなるか。